科学

反対運動ふたたび(3)

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 ウシ成長ホルモン(BGH)は、多くの点でヒトの成長ホルモンと似ているが、このホルモンは雌ウシの乳の生産量を増や…

反対運動ふたたび(2)

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 「定向分子進化法」と呼ばれる方法は、自然選択のプロセスをまねたものである。自然選択では、突然変異によって新たな…

反対運動ふたたび(1)(P.221〜P.225)

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 遺伝子組み換え技術を使えば、事実上すべてのタンパク質を細胞に作らせることができる。そこから当然、次のような疑問…

学術研究と特許

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 ハーバード大学のレーダーのグループは、がんを研究する過程で、乳がんをとくに発症しやすいマウスの系統を作った。遺…

RNAワールド

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 細胞内におけるRNAの主要な役割がわかったことから、興味深い疑問が生じた。DNAの情報をアミノ酸配列に翻訳する…

ヘモグロビンの形成過程

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 具体的にヘモグロビンというタンパク質がどのように形成されるかを見ておこう。 赤血球は、酸素の輸送を専門とする細…

暗号解読

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 暗号がトリプレットになっていること、そしてDNAとタンパク質を結びつけているのはRNAであることはわかった。し…

フレームシフト

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 1961年、ケンブリッジ大学でブレナーとクリックは、暗号がトリプレットであることを示す決定的な実験を行った。彼…

セントラル・ドグマ

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 フランシス・クリックは後に、DNA→RNA→タンパク質という情報の流れを“セントラル・ドグマ”と呼んだ。この考えは…

ガモフの登場

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 二重らせん構造を発表してまもなく、フランシス・クリックと私は、ロシア生まれの著名な理論物理学者、ジョージ・ガモ…

形質転換を引き起こしているのはDNA?

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 DNAが一躍注目されるようになったのは、1944年、ニューヨークのロックフェラー研究所のオズワルド・エーヴリー…

エルヴィン・シュレーディンガー著「生命とは何か」

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 私が遺伝子に夢中になったのは、1944年に出た「生命とは何か」という小さな本に感動したからだった。著者は、オー…

遺伝子の発見

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの抜粋。 遺伝のしくみを正しく捉えた人物こそグレゴール・メンデルである。(中略) 1856年ごろ、メンデルは修道院長ナッ…

翻訳者:青木薫さん

今、読んでいるジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA」も青木さんの翻訳した本である。サイモン・シンの本「フェルマーの最終定理」、「暗号解読」、「ビッグバン宇宙論」も青木さんの翻訳だった。青木さんの翻訳は非常に読みやすい。…

遺伝学の最大の功労者

ジェームス・D・ワトソン、アンドリュー・ベリー著「DNA (上)―二重らせんの発見からヒトゲノム計画まで (ブルーバックス)」からの引用。 私たちは何世代にもわたり、最初の目的にかなった種だけを飼い慣らし、次にはたくさん仔を産む牛や、大きな実のなる果…

言語野は万能ではない

酒井邦嘉著「言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)」からの引用。 私の考えでは、サルの脳が万能であっても一向に構わない。知覚や記憶に関する複雑な情報を扱うには、脳の能力ができるだけ高いことが望ましい。しかし、もし人間の脳の…

右利きと左利き

酒井邦嘉著「言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)」からの引用。 右利きの人の約96%は、言語機能が左脳に局在している。従って、右利きの人で失語症が起こるのは、左脳に損傷を受けた場合がほとんどである。このように、特定の機能…

脳の決定論

酒井邦嘉著「言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)」からの引用。 動物は、遺伝子によって、体の形だけでなく行動の特徴までが決められている。多くの人にとって、これは驚きだろう。この考えは、1970年代初めにアメリカのベンザー…

電力線通信解禁?

総務省の電波監理審議会が、電気のコンセントを利用した高速電力通信を解禁する答申を出したことに、短波放送関連企業、天文学者、アマチュア無線家が反発しているという。この通信方法では、短波に近い電磁波が発生するらしい。 コンセント利用の電力線ネッ…

ピュタゴラス派

ロビン・アリアンロッド著「世界を数式で想像できれば―アインシュタインが憧れた人々」からの引用。 この本自体は、数理物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルを描いた伝記的な本なのだが、節々に数学や科学の歴史がちりばめられている。サイモン・シ…

遅延時間がある理由

V.S.ラマチャンドラン著「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ」からの引用。 探検家のデイヴィット・リヴィングストンがライオンに襲われたときの有名な話があります。彼は自分の腕が食いちぎられたの見ても、痛みはおろか恐怖さえまったく…

自己

V.S.ラマチャンドラン著「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ」からの引用。 「自己」とはいったいどんなものなのでしょうか?自己を定義づける特徴は5つの部分からなっています。第1は、連続性。私たちの体験全体を、過去・現在・未来を…

自由意志と遅延時間

V.S.ラマチャンドラン著「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ」からの引用。 数十年前にアメリカの神経外科医ベンジャミン・リベットとドイツの生理学者ハンス・コルンフーバーが、ボランティアを対象に自由意志の行使に関する実験をおこな…

統語の階層構造

V.S.ラマチャンドラン著「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ」からの引用。 言語の起源についてラマチャンドランは、次のようではないかと推測している。 視覚的外形と聴覚表象とのあいだに共感覚的なクロスモーダルの抽象化が先に進行して…

芸術家や小説家の脳

V.S.ラマチャンドラン著「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ」からの引用。 共感覚に関して、昔から知られ、無視されてきた奇妙な事実があります。芸術家や詩人や小説家−言いかえれば変わったタイプの人たち−に、7倍もよく見られるという…

笑い

V.S.ラマチャンドラン著「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ」からの引用。 私は、痛覚失象徴と呼ばれる、奇怪なシンドロームに出会ったことがあります。驚いたことにこの患者は、痛覚刺激に対して「痛い!」と反応せずに、声をあげて笑う…

痛み

V.S.ラマチャンドラン著「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ」からの引用。 痛みは、ふつうは一種類だと思われていますが、少なくとも二つのタイプがあって、別々の機能のために進化してきたのではないかと考えています。急性の痛みは、た…

カプグラ症候群

V.S.ラマチャンドラン著「脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ」からの引用。 相貎失認はよく知られていますが、これとは別に、カプグラ症候群という非常に稀なシンドロームもあります。私が少し前に出会った患者は、交通事故で頭にけがをし…

ホイルの貢献(2)

19世紀中頃、宇宙論研究者たちは、水素とヘリウム以外の原子がどうやって生成されたのかをうまく説明できなかった。ビッグバン・モデルでは、水素とヘリウムはビッグバンが生じたときに生成したとしている。そして、その生成量は、今の水素とヘリウムの宇宙…

宇宙論の簡単な経緯とホイルの貢献(1)

1920年代、ルメートルがビッグバン・モデル(宇宙創造の瞬間があり、宇宙は進化している)を提唱し、宇宙は永遠で静的なものだと考えられていた従来のモデルに対抗する宇宙モデルが誕生した。アインシュタインは、当初宇宙は永遠で静的なものと信じ、一…