人間の波長

 ケネス・W・フォード著「不思議な量子」からの引用。

 人間にも波長はあるのか?あるけれど、短すぎてまず測れない。波とみた人体が「ぼやける」度合いはごくわずか。秒速1メートルで歩く人の波長は10^{-35}しかなく、原子核より何桁も小さい。波長がそれほど短くなるのは、運動量が途方もなく大きいからだ。秒速1mは大した速さではないが、質量が粒子に比べて桁ちがいに大きいため、速さと質量の積(運動量)が莫大な値となってしまう。
 もっと遅くて軽い生き物を考えても、話しはたいして変わらない。年に1メートルだけ動く質量1gの虫の波長も、せいぜい10^{-23}ほど。だから人も野球のボールもバクテリアも、くっきりとした輪郭をもち、波の姿は現さない。内部では電子の波動性が原子の実質をつくり、人やボールやバクテリアをつぶれないように支えているのだが。