X線によって引き起こされる突然変異
E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。
突然変異が子孫に現れる百分率、すなわち、突線変異率は、両親にX線またはガンマー線を照射することによって、自然に起こる突然変異の僅少な率の何十倍にも増すことができる。このようにして生じた突然変異は、自然発生的に起こるものとくらべて、(数多く起こるという点の他には)まったく何ら異なるところはない。
X線で生じた突然変異に関する諸実験から考えると、あらゆる特定の遷移、たとえば正常個体からある特定の突然変異種への遷移あるいはその逆のものには、それぞれ固有の「X線係数」があると思われる。
Wikipediaによると、X線の波長は、1pm(ピコメーター)〜10nm(ナノメーター)だという。
また、ガンマー線は1pm以下の波長を持っており、一部X線の波長領域と重なる部分があるらしい。X線とガンマー線の区別は発生機構で区別されているみたいだ。X線は、軌道電子の遷移によるもので、ガンマー線は、原子核内のエネルギー準位の遷移によるものだとしている。軌道電子の遷移とは、低いエネルギー軌道(例えば1s軌道など)の電子が高いエネルギーを与えられて飛び出して後に、高いエネルギー準位から電子が移動する減少をいい、その時放射される電磁波がX線だといっている。
紫外線ぐらいの波長320nmぐらいでも高いエネルギーを持っていて、皮膚がんの原因になったりするのだから、それよりもエネルギーの高い(波長が短い)X線やガンマー線をたくさんあびると遺伝子内部で化学変化が起こったとしても不思議ではないだろう。もちろん、あびる量が少なければそれほど大きな影響は受けないと思うが。
こういった実験を行うときは、どのくらいのX線を照射してるのだろうか?
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前回までのE.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約
- E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞
- 統計物理学からみて、生物と無生物とは構造が根本的に異なっている
- 原子はなぜそんなに小さいのか?
- 生物体の働きには正確な物理法則が要る
- 物理法則は原子に関する統計に基づくものであり、近似的なものにすぎない
- 法則の精度は、多数の原子の参与していることがもとになっている
- 第二の例(ブラウン運動、拡散)
- 測定の精度の限界
- 分子数の平方根の法則
- 古典物理学者の予想は、決して詰まらぬものとは言い捨てられないが、誤っている
- 遺伝の暗号文(染色体)
- 生物体は細胞分裂(有糸分裂)で成長する
- 有糸分裂では、すべての染色体がそれぞれ二つになる
- 減数分裂と受精(接合)
- 遺伝子の大きさの限界
- 遺伝子の永続性
- 突然変異種は育種可能である、すなわちそれは完全に遺伝する
- 遺伝子の座、劣性と優性
- 突然変異は稀な出来事でなければならない