1から10までの合計を計算する方法
「博士の愛した数式 (新潮文庫)」の中で、博士がルート(家政婦の息子)に1から10の合計を計算する方法を宿題として出す場面がある。ルートは、単純に1から10までの数を足して、55と回答する。
すると、博士は、その方法と違ったやり方で導く方法を考えるようルートに再度宿題を出す。
もちろん、ルートは遊びの方がたのしいし、じっとそれを考えることなどしない。主人公であるわたし(家政婦)がその問題に真剣に取り組んでいくことになる。主人公のわたしは、寝ても覚めても1から10までの足し算方法を考えることに没頭していく。
ある日、遊びから帰ってきたルートがいった一言が、考えているわたしにヒントを与えてくれる。
「1から10までの中で、10だけちょっと、のけ者なんだよね」
「どうして?」
「だって、10だけ、二桁じゃないか」
「10さえいなかったら、真ん中の位置がぴたっと決まって、気持ちいいのに」
そして、主人公のわたしは、1から9の平均値が5であることに気づく。導かれた式は次の通り。
実は、1から10の平均値を求めて掛け算した結果も同じになる。
これは、等差数列の場合、初めの数値と最後の数値を足して2で割ったものが平均値なるという公式があり、それを利用したもの。この公式は簡単に導ける。
例えば、1から10までの数値を考えると、
この式を、少し入れ替えて、
とする。そして上の式と下の式を足すと、
となる。合計の2倍になっているので単純に2で割ると55となる。
従って、一般式、
の公式は、
となる。
実は、中学1年生の頃、公式を求める方法や図形の証明に、はまった時期があった。当時の中学校の教室には、必ず前と後ろに黒板があって、そのうち、後ろの黒板は、生徒がある程度自由に使うことが許されていた。
今では、だれがはじめたのか思い出せないが、黒板の片隅に数学の証明問題が掲示されたのがきっかけとなって、だれかれとなく、自分が解けた問題をその黒板に出題するようになった。
懸賞などは、なかったと思うが、誰がその問題を先に解くかに夢中になったものだ。自分が出題した問題がいともあっさり解かれれば、がっかりするし、何日もそのままだと優越感に浸れる。
ただ、単純な遊びだった気がする。