アイザック・ニュートン(2)

 E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。

 (a+b)^nの展開式は、無限に多くの項を含む;すなわち無限級数となる。これを見るため、パスカルの三角形を前とはちょっと違う形で書いてみよう。

n=0: 1 0 0 0 0 0 0 \cdots
n=1: 1 1 0 0 0 0 0 \cdots
n=2: 1 2 1 0 0 0 0 \cdots
n=3: 1 3 3 1 0 0 0 \cdots
n=4: 1 4 6 4 1 0 0 \cdots

 任意の行のj番目とj-1番目の数の和がその下の行のj番目の数となる。各行の終わりのゼロは展開が有限であることを示しているに過ぎない。nが負の整数の場合を扱うため、ニュートンは逆向き(われわれの表では上向き)に表を展開した。すなわち、各行のj番目の数とその一つ上の行のj-1番目の数の差を計算して上の行のj番目の数とするという形をとった。各行が1から始まるということを知っているとして、彼は次のような配列を得た。

n=-4: 1 -4 10 -20 35 -56 84 \cdots
n=-3: 1 -3 6 -10 15 -21 28 \cdots
n=-2: 1 -2 3 -4 5 -6 7 \cdots
n=-1: 1 -1 1 -1 1 -1 1 \cdots
n=0: 1 0 0 0 0 0 0 \cdots
n=1: 1 1 0 0 0 0 0 \cdots
n=2: 1 2 1 0 0 0 0 \cdots
n=3: 1 3 3 1 0 0 0 \cdots
n=4: 1 4 6 4 1 0 0 \cdots

 例えば、n=-4の行の84はその下の28と左の-56との差である:28-(-56)=84。この逆向きの展開で得られた結果がnが負の場合に当たり、展開はいつまでも終わらない;有限和でなくて無限級数が得られる

 パスカルの三角形とは、二項式の累乗(例えば(a+b)^2など)のそれぞれの係数をn=0から順に並べていった三角形のこと。二項式の累乗をn=0から4まで、書いてみると、
(a+b)^0=1
(a+b)^1=a+b
(a+b)^2=a^2+2ab+b^2
(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3
(a+b)^4=a^4+4a^3b+6a^2b^2+4ab^3+b^4
となる。それぞれの変数の係数だけを抜き出すと

1
1 1
1 2 1
1 3 3 1
1 4 6 4 1

のようになる。これをパスカルの三角形という。上の行の隣り合う数値、例えば、2行目の1と1を足した数値がその下の行のそれらの数値(1と1)の下にある数値(2)と等しくなっている。4行目と五行目の関係を見ると4行目の1と3との間にある5行目の数値4は、1+3、3と3との間になる5行目の数値は3+3=6になっている。