量子論(飛び飛びの状態)量子飛躍

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。

 量子論による一大新事実は、「自然という書物」の中に不連続性というものが発見されたことである。
 原子の大きさ程度の体系は、その本性上、あるいくつかの飛び飛びの量のエネルギーしか持つことができない。その許されたエネルギー量は、その系に固有なエネルギー準位と呼ばれる。ある一つの状態から他の一つの状態への移り変わりは「量子飛躍」と呼ばれる。
 一つの状態とは、すべての粒子のある一定の配列状態を意味する。これらの配列状態の一つから他の一つへの移り変わりが量子飛躍である。もし第2の状態の方が大きなエネルギーをもつならば(第2の方が「より高い順位である」なら)、その遷移を可能にするために少なくとも二つのエネルギーの差だけをその系に対し外部から供給しなければならない。エネルギーのより低い一つの準位に対しては、系は自発的に移り変わることができ、その際、あまりのエネルギーを放射の形で放つ。

 今、リサ・ランドール著「ワープする宇宙」を読んでいるところだが、次のような記載がある。

 もっとも基本的な粒子の性質がフェルミオンであるということが、この世界の物質の性質の多くを決めている。パウリの排他原理によれば、同じタイプのフェルミオンが二つ同じ場所にいることはありえない。この排他原理があるからこそ、原子は化学反応の基盤となる構造をもてる。同じスピンをもつ電子どうしは同じ場所にいられないので、別々の軌道にいなければならない。(中略)排他原理は、人間がテーブルに手を突っ込んだり地球の中心に落ち込んでいったりできない理由でもある。テーブルも人間の手もしっかりとした固体構造をとっているが、それは排他原理によって物質が原子構造や分子構造や結晶構造をとるからにほかならない。あなたの手のなかにある電子は、テーブルのなかにある電子と同じものだから、あなたがテーブルを叩いてもテーブルのなかには入っていかない。同じフェルミオンが二つ同時に同じ場所に存在することはできないので、物質は崩壊できないのである。

 量子力学では、粒子をボソンとフェルミオンとに分けている。ボソンは光子が代表例で、パウリの排他原理に依存しない。フェルミオンは陽子や中性子そして電子など、物質の構造を構成している粒子が代表例となるらしい。
 パウリの排他原理とは、Wikipediaによると、

パウリの排他原理(パウリのはいたげんり)とは、1925年にヴォルフガング・パウリが提出した「1つの原子軌道に属する2つの電子は電子の量子状態を決める4つの量子数の全部を共通にはもちえない」という仮定である。

とある。
 このように、電子が物質の中で飛び飛びのエネルギー状態を持っているため、物質にある化学反応が起こるためには、より高いエネルギー状態に一度持っていき、再び安定な状態へと移行させるためのエネルギーが必要になってくる。そして、突然変異が起こるには、放射線レベルのエネルギーが必要らしい。放射線レベルのエネルギーを一度にあびる可能性は、原爆や原子力発電所の爆発など強い爆発反応を伴う現象からしか、ないだろうから、今の日本では、非常に低いことになる。

 前回までのE.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約