遺伝する新しい変異

生命進化8つの謎

生命進化8つの謎


 ジョン・メイナード・スミス、エオルシュ・サトマーリ著「生命進化8つの謎」より。

 ダーウィンの考えは簡単なものだが、たぶんあまり簡単すぎるせいで、身近に見る生物の複雑さが実際それで説明できるとは信じにくいかもしれない。ミルクをさらに多く出す雌牛を育種で育てることはできるだろうが、空を飛ぶ豚とか言葉を話す馬を作ることはできないだろう。選択と育種の出発点となるべき変異が、そもそも存在していないからである。進化によってしだいに複雑さを高めている変異は、どこから現れてくるのか?生物学の教科書にはたいてい、遺伝する新しい変異は突然変異であり、これはランダムに生ずると書いてある。この言い方もまあ間違いではないが、「ランダム」という語は定義がたいへん難しい。むしろ、新しい突然変異は一般には適応を高めるよりも、生存にとって有害なことが多いと述べる方がよいだろう。もともと適応を高めないものとして生じてきたはずの突然変異が、身近に見られる驚異的によく適応した生物を生み出してきたというのは、本当だろうか。本書はこの疑問に答えようとするのだが、そのなかで現代生物学の色々な部分を次々に見渡していくことになるだろう。

 まだ、読み始めたばかりなので、全体の内容は、わかっていない。上記のように、突然変異は、生物にとって有害となることの方が多いように思える。それなのに、突然変異なしで進化は起こっていないらしい。こういった進化についての疑問が、進化の移行段階で8つあると著者らは言っている。
 また、生命の起源の問題について、

 生命の起源の問題とは、「増殖」と「変異」と「遺伝」をもった存在が原始地球の化学的な環境を出発点として、最初にどのように生じてきたかという問題となる。これら三つの特性が与えられれば、生物に予期される他の特性は進化してくることができるだろう。

と定義している。原始地球のイメージがつかめていない。生物が存在する前の地球環境をどう定義してるのかは、残念ながら、本書ではあまり詳しくふれられていない。このあたりを補足してくれる本があると良いのだが。