脳と創造性

 昨日、オルガテクノ2006の特別講演で、茂木健一郎氏の話を聞いてきた。1時間あまりの講演だったので、さわり部分しか話はなかったのだが、いくつか感じたところがあるので、メモっておくことにした。
 まず、「脳は、ある程度の規則性を持ち、ある程度不規則なものを好む」という話しである。茂木氏が上げた例をあげると、

  • われわれは、飲み屋で、何度も同じことをいつも話す人を敬遠する。また、逆にまったくわからない内容を話す人にも興味を示さない。ある程度共通認識を持っていて、自分が知らない話題や考えを面白いと感じる。

 サッカーや野球などゲームやパチンコや競馬などのギャンブルに人が熱狂するのは、一定のルールがあり、そのゲームやギャンブルを特定できる状態があり、新たに見たり、やったりしているゲームやギャンブルの中に、脳が新しいエピソードを求めるいるからだという。脳は、すでに記憶しているエピソード記憶に新しい情報を書き加えたがる性質があるというのである。この性質が創造性と深く関わっている。
 新しく何かを発見するときに直感が働いたという人は、少なくない。フェルマーの最終定理を証明したワイルズは、自分の家の2階に閉じこもって定理の証明に挑戦していたが、どうしても行き詰まり、気分転換のために学会にでて、他の科学者と話しをしているうちにヒントを得た。このときも直感であったという。ここでいう直感とは何にも無いところから出てくるものではなく、経験の中で蓄積された情報が前提で生まれる直感である。今までつながらなかったある線とある線があることがきっかけでつながるといった事柄だ。
 これは、脳がエピソード記憶に新しい情報を加えたがっている状況と同じだといっていた。エピソード記憶は、一度記憶するとそのまま保存されているわけではなく、常に新しい情報を得て、書き換えられているらしい。
 茂木氏は、こうした脳の性質を利用して深く掘り下げたのが行動経済学だと言っていた。人が何を欲しがっているのかを脳の性質まで考慮して考え出された学問のようだ。行動経済学に関しては、まったく知識がないのでコメントのしようがない。
 この話を聞いて、ふと思いついたことが、二つある。一つは、「脳の性質は、進化そのものではないか」ということ。そして、もう一つは、「右肩上がりの経済学は、この脳の性質が元になっているのではないか」ということである。どうしてと聞かれると、現時点では説明できないが、直感のようなもので、もしかすると間違っている可能性が高い。が、何となく、そんな視点で一度経済学や進化論を調べてみたいと思った。
 この手の思いつきは、すぐにどこかに飛んでいってしまうため、覚書の意味でメモっておくことにしたのである。