<span style="font-weight:bold;">製品の環境負荷</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 わたしたちの使用している工業製品は、地球環境に何らかの影響を及ぼしています。製品の材料は、鉱石や石油などを採掘・精製して得られ、製品はこれらの材料から製造されます。この採掘・精製および製造には多くのエネルギーが使われ、大気汚染物質、水質汚濁物質、廃棄物などの環境負荷物質が排出されます。
 さらに製品は、消費者によって使用され、寿命がくると廃棄物として排出、最後にリサイクル、焼却などの処理が行われます。この使用・処理においても、エネルギーが使われるなど環境負荷が発生します。
 このように、製品の環境負荷は、製品の原料の採取から製品が廃棄されるまでの一連の工程(製品ライフサイクル)で発生します。したがって、製品の環境改善には、製品のライフサイクルにおける環境負荷を定量的に把握し、環境にどのような影響を及ぼす可能性があるか評価する必要があります。このような問題に対処する手法の代表的なもののひとつに、ライフサイクルアセスメント(LCA)があります。

 人類が銅や鉄などの金属を利用できるようになったのは、精製のためにどれだけ温度が上げられるかことが、重要なファクターとなっています。
 普通、金属は、そのままの姿で地球に埋蔵されていません。酸化物だったり、他の元素と混ざり合ったりして存在しています。これは、地球が高温状態から徐々に冷えて現在の形状に落ち着いた経緯に依存します。
 従って、金属を単体として取り出すために、人類がどれだけ温度を上がられたかで、金属を利用できるようになれた時期が決まっているのです。
 歴史的に見ると、銅、鉄、アルミの順で利用できるようになっていったのですが、アルミニウムが精製に一番高い温度を必要とします。アルミニウムの精製には、銅や鉄に比べ、たくさんのエネルギーが必要だったということで、そこにたどり着くのに長い年月が必要だったのです。
 私たちが、便利に利用している金属が、その姿になるまでに、かなりのエネルギーが使用されていることがわかります。
 ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、発掘・精製から製造、使用、廃棄に至るまで、どれだけエネルギーが使用されているか(インプットデータ)や二酸化炭素が排出されているか(アウトプットデータ)など、環境負荷がどれだけかかっているかを計算し、評価するシステムです。
 従って、そこに係わっている企業が多数含まれており、データをいかに正確に把握するかが課題となっています。


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<span style="font-weight:bold;">ライフサイクルアセスメント(LCA)の概要</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 図3ー32に示すように、製品ライフサイクルの各工程でさまざまなエネルギーや資源が投入され、環境負荷物質が排出されます。LCAは、製品ライフサイクルの各工程におけるインプットデータ(エネルギーや天然資源の投入量等)、アウトプットデータ(環境へ排出される環境負荷物質の量等)を科学的・定量的に収集し、その結果を評価するものです。
 データの収集は自ら測定することが望ましいですが、すべてのデータを集めるのは多くの艱難がともないます。このような場合、製品ライフサイクルの一部の工程を文献等で発表されているデータ(バックグラウンドデータという)を使って補う方法がとられます。
 これまで、バックグラウンドデータが整備されていなかったためLCAを行うことは大変な作業でしたが、最近では、バックグラウンドデータとしての汎用データベースも整備されつつあり、LCAの活用がいっそう進むことが期待されます。
 図表3ー33は、自動車についてLCAの実施結果の一例で、地球温暖化物質の二酸化炭素の排出量で分析した結果です。ガソリン車では使用段階(図表3ー33の走行部分)での二酸化炭素排出量が製品ライフサイクルの約75%を占め、環境負荷の低減には燃費改善がもっとも効果のあることがわかります。この結果を活用して大幅な燃費向上をめざしたのがハイブリット車で、あるメーカーのハイブリット車の場合、ライフサイクル全体の二酸化炭素排出量はガソリン車の約70%と燃費改善を達成しています。
 このように、LCAを活用することにより、改善点を明確にした開発が可能となり、製品の環境改善の強力なツールとなっています。

 私たちは、生きているかぎりどんな生活をしても、エネルギーを消費し、二酸化炭素や熱を排出します。従って、まったく環境負荷をかけないで生きていくことはできないのです。しかし、効率よく環境負荷を軽減させることはできると思います。LCAは、一番効率のよい方法を明示してくれる分析データです。
 自動車の例でいれば、製造までにかかる負荷よりも使用時の負荷の方が大きく、燃費向上が一番効率よく環境負荷を軽減できる手段であることがわかります。


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