「化学調味料を食べすぎると、「中華料理店症候群」が起きる」という誤解

 松永和紀さん著「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)」からの引用。

  • 化学調味料を食べ過ぎると、頭痛や腕の震えなどの「中華料理店症候群」(チャイニーズレストランシンドローム)が起きる

 この話は多くの人が信じ込んでいて、一般向け医学事典などにも記載されていますし、人気の育児書などにも載っています。しかし、化学的には完全に否定されています。
 ことの起こりは1968年。「ニュー・イングランド・ジャーナル・メディシン」というとても権威のある英国の医学誌で「中華料理を食べた後、頸部と腕のしびれ、脱力感と動悸が起こる例がある」と報告され、中華量に含まれる化学調味料のグルタミン酸ナトリウムが原因ではないか、と疑われました。
 しかし、ほかの研究者の調査や実験では同様の結果を確認できなかったのです。WHO(世界保健機関)なども調査し、グルタミン酸ナトリウムとは関係ない、と結論づけたのですが、アメリカでも日本でも噂は止まりません。
 そこで、アメリカでは90年代におおがかりな調査が行われました。中華料理店症候群になると自分で思っている人130人に集まってもらい、大量のグルタミン酸ナトリウムを含む食事や含まない食事などを用意し、被験者には伝えないまま食べてもらって症状が出るかどうかを確かめます。その際には、症状を診断する医師にも、グルタミン酸ナトリウムが含まれているかどうかは知らされない「二重盲検法」という調査方法を用い、被験者や判定者の思いこみにはまったく左右されない結果を得たのです。さらに、グルタミン酸ナトリウムの摂取で症状が出た人には、同様の試験を再び行い、再現性があるかどうかも確かめます。
 こうして、化学的に非常に厳密な試験で得られた結果は、グルタミン酸ナトリウムによる症状誘発はない、というものでした。この研究は2000年に米国の学術誌に発表され、これをとどべに、中華料理店症候群は完全に否定されたのでした。ところがいまだに、日本の雑誌などでは報道されてしまいます。

 グーグルで「中華料理店症候群」で検索すると、392,000件がヒットした。中華料理店症候群を信じている人のサイトも多いみたいだ。その中でWikipediaの記載がまともなものになっている。確か、昔読んだ本では、中華料理店症候群は遺伝的な疾患だという記載があったような気がする。非常に稀な症状でグルタミン酸ナトリウムとは関係なかったような気がするが、記憶が曖昧だ。また、例えば味の素を一瓶全部食べてしますなど大量に摂取した場合に吐き気などを催すことがあるらしいが、はっきり言ってそんな摂取の仕方は以上だと考えてよいだろう。通常の食事に含まれている量は、1g未満なのでこういった症状がでることはほとんど無いと考えてよさそうだ。
 しかし、このアメリカの大調査は、日本で報道されたのだろうか?こういう安全情報こそ流してもらいたいものだ。