「亜硝酸ナトリウムは強力な発ガン物質」という誤解

 松永和紀さん著「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)」からの引用。

  • ハムやソーセージ、明太子などに使われる合成発色剤「亜硝酸ナトリウム」は強力な発ガン物質である。

 これは食品添加物批判者が昔から指摘していることです。亜硝酸ナトリウムは体内に入ると亜硝酸イオンとなり、体内のアミンという物質と結合して強い発ガン性を持つニトロソ化合物ができる。それは胃ガンの原因となる可能性がある、という主張です。彼らは、昔ながらの岩塩を使ったハムやソーセージがいい、といいます。
 しかし、野菜に大量に含まれる硝酸塩も体内で亜硝酸イオンに変わることが分かっています。この量を比べると、添加物として摂取する亜硝酸イオンは少なく、問題とはならないというのが国や科学者の見解です。
 しかも、添加物批判者が推奨する岩塩には亜硝酸ナトリウムが含まれている場合が多いのです。合成発色剤として使われるものとまったく同じもの。そして、亜硝酸イオンにはボツリヌス菌の繁殖を抑える効果もあります。
 昔の人は、岩塩を使うときれいな色に仕上がるうえ、致命的な菌の繁殖を抑える効果があることに気付いたからこそ利用していたのでしょう。岩塩だからマルで、亜硝酸ナトリウムの添加はバツとするのは、実は先人たちの努力をないがしろにする行為でもあります。

 岩塩などの天然塩に微妙な味わいがあるのは、塩化ナトリウム(塩)意外に微妙に含まれている不純物があるからだと思う。当然不純物は、必ず一定の量が含まれているというものではなく、含まれている場合もあるし、無い場合もあると言うことだろう。地理的な条件で、ある地方の岩塩には、ある一定の特定物質が含まれていると言う可能性はある。しかし、これも気象条件などの変化によって異なってくるのが自然というものだと思う。
 以前、日本酒の「八海山」を製造する会社の人がテレビのインタービューに出ていて、「今年のものと来年のものが、まったく同じであるはずがない。近寄るように努力はしているが、まったく同じものを作るなんてことはできないですよ。」と言っていたが、その時、「そうだよな。当たり前のことだよな」とうなずいてしまった。
 その年できた米の出来具合やその年の気象条件など自然を相手にする部分が多いと言うことはそれだけ不確実性が高いということでもある。しかし、その不確実性の中で非常に美味しいお酒になったり、逆にがっかりする年があったりするから楽しいのだと思う。自然と共存するというのはそういうことだと思う。
 岩塩にも同じことがいえると思う。常にどこどこの岩塩はうまいということにはならないと思うのである。できた時期が一緒なら同じ味だということはいえるかも知れないが・・・・
 そして、味の決め手が不純物の中にあり、それが何かが化学的に見つかれば、当然、その物質だけを加えて料理を作った方が味の再現性は高くなると思う。
 岩塩を使うよりも亜硝酸ナトリウムを使う方が、添加物の量も減らせるだろうし、味も安定すると思う。