洗剤メーカーの「ライオン」が、アブラヤシから取った油で洗剤を作り、テレビのコマーシャルで「環境にやさしい植物原料」と宣伝しているのに対し、国内の八つの環境NGO(非政府組織)などが7日、「アブラヤシ栽培で自然破壊などが起きており、『環境にやさしい』との表現は誤解を与える恐れがある」と、表現の変更を求める要請文を同社に提出した。ライオンは「今月中に回答したい」としている。
 アブラヤシは東南アジアを中心に栽培されている。油は「パーム油」と呼ばれ、洗剤や塗料、マーガリンや食用油などに使われる。石油に代わる原料として注目され、日本の輸入は94年からの10年で30%以上増えた。
 コマーシャルではマレーシアのアブラヤシ農園が映り「環境にやさしい植物原料の洗剤」とナレーションが流れる。ライオンはホームページでも「植物原料は二酸化炭素増加の抑止に貢献します」と説明している。
 一方、現地ではアブラヤシ農園の拡大のため、貴重な生態系が残る熱帯雨林の大量伐採や、開墾のための森林への放火などが起きている。農薬汚染や、劣悪な条件での農場労働も問題とされている。要請文を出したNGOの一つ「地球・人間環境フォーラム」の満田夏花さんは「パーム油が抱える問題を考えてほしい」と話している。【永山悦子】

毎日新聞 2006年4月9日 3時00分

 環境NGOは、非常にいい提言をしたと思う。石油代替え素材をアピールするとき、一部で「植物由来であれば全て良し」という風潮がある。トウモロコシを材料とした生分解性ポリエステル、ケナフを使用した再生紙、そして大豆を使用したインクなど。この中で、ケナフはパルプから一年草に切り替えることで、森林破壊を減らしていこうという意図があるが、他の二つは単に石油代替え素材を探した結果に過ぎない。
 トウモロコシや大豆は、貴重な食料でもある。記事中にあるパーム油も食用油として使われてきた。これらは全て、森林を伐採し農地を確保して生産される。人間にとっては必需品であるが、自然から見れば人工で作られた農地であり、自然大系を変化させて人間が利用しているに過ぎない。
 確かに生分解性ポリエステルを普及しようしている方々が言っているように、「生産されたトウモロコシは全て有効活用されていない。従って、余剰部分を利用して他の製品を生産している。」という主張は一理ある。しかし、生分解性ポリエステルの原料であるポリ乳酸は、他の植物からも得ることはできる。大量生産されていることでコストが下がるため、トウモロコシを使用しているに過ぎない。そして、植物由来原料を使用する上で、このコストは重要なファクターである。
 このコスト問題を大量生産に求めれば、上記記事のように自然破壊に繋がる。営利目的で動く企業が主体に動けば、この部分は解決しない。従って、NPOなど非営利団体が積極的に意見を述べ、参加してゆくことは、非常にいいことだと思う。常にトレードオフを意識した対応が必要だと思う。