WHO刊行「BSEの脅威について理解する」③

2. 消費者保護のための問題提起から
WHOからの問題定義①

牛の飼料として何が与えられているのか。
BSEが牛のと体の再利用と関係があるのは明らかである。牛の と体から回収したいわゆる「肉骨粉」を、餌として他の牛に与えることがBSEの原因である。反芻動物(ウシ、ヒツジ、ヤギ)のと体から得たタンパク質を牛が餌として与えられなければ、実質的なBSEの危険性はない。また、反芻動物の と体から摂取したタンパク質がブタと家禽のみに与えられ、その餌が牛の飼料に混入したり、飼料を汚染したりする可能性がない国では、BSEの危険性はごくわずかである。

 牛に共食いを強制的にさせたのがBSE発生の主な原因。肉骨粉を牛に与えなければ、BSE発生の確率はかなり低くなる。もともと牛は草食動物で、肉食ではない。反芻動物からの動物性タンパク質摂取を禁止すれば、その国でBSEの危険性はごくわずか。

政府はBSEに対して積極的監視体制を整えているか。
近年、簡易スクリーニング検査が導入され、その実施が多くの国で義務付けられた。このことによりBSE発見の確率が大幅に向上した。このような感染牛の「積極的な」発見とその後の完全な処分によって、大規模な感染物質の混入が防止可能である。積極的監視体制をとっている国でごく少数の症例が出たという報告は、ずさんな監視体制の国で何の症例報告もされていないというケースに比べ、より安心できるものであろう。

 感染牛の「積極的な」発見とその後の完全な処分によって、大規模な感染物質の混入が防止可能。積極的監視体制をとっている国でごく少数の症例が出たという報告はずさんな監視体制の国で何の症例報告もされていないというケースに比べ、より安心できる。日本の全頭検査は行き過ぎとしても、監視体制は先進国の中でも進んでいる。従って、日本でBSE発症例が報道されても大騒ぎする必要はない。

BSEは輸入されたものか、あるいは国内で生まれた牛が原因なのか。
牛の群れの中ではBSEは伝染せず、動物個体間において広がりはみられない。感染した牛が完全に処分され、 と体を餌として再利用することがなければ、輸入牛単独での発生がBSEの流行を引き起こすことはないだろう。それよりもさらに懸念すべきなのは、国内の群れの中で生まれた牛にBSEが発生した場合である。それは国内での飼料の与え方に問題があるということを意味しており、他の多くの牛が感染の危機にさらされていることを示唆しているからである。

 BSEの場合、トリインフルエンザのような空気感染は見られていない。従って牛同士の接触で、BSEが広がる危険性はない。感染した牛を適性に処分すれば、感染は広がらない。監視体制がしっかりしていない肉骨粉を牛に与えてしまう国から輸入の方が危険。東南アジアやアフリカの監視体制がしっかりしていない一部の国からの輸入は注意すべき。

肉は若齢牛からとっているか。
 BSEの潜伏期間は大変長く、4〜5年である。この期間中、BSEに感染した牛は何も症状を示さない。また、潜伏期間の後期になるまで組織からは何の感染物質も見つからない。牛を若齢(できれば30ヶ月以下)でと殺すれば、子牛肉や食用肉、他の牛肉製品によって変異型CJDが発生する可能性は非常に低くなる。

BSEの潜伏期間中は、BSE感染牛を見つけることはできない。おそらく、牛に異常プリオンが存在しないものと思われる。BSEの場合、異常プリオンが正常プリオンをβシート型異常プリオンに変化させて病状がひどくなっていくと考えられている。従って、異常プリオンが見つからなければ、BSEに感染しているかどうかがわからない。日本でおこなわれている全頭検査が無意味である理由はここにある。