<span style="font-weight:bold;">生物濃縮</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 1962年、アメリカの科学者レイチェル・カーソンは、「沈黙の春(サイレント・スプリング)」を著し、農薬による環境汚染を厳しく指摘しました。環境中に放出された化学物質はごく微量であっても、食物連鎖の各段階を経るごとに生物の体内で濃縮され蓄積されて、場合によって死に至る毒の連鎖に変わる危険があるという指摘です。食物連鎖によって汚染物質濃度が増加していくことを「生物濃縮」といい、ピラミッドの上位にいる生物ほどその影響を受けやすいことになります。p.36

 公式テキストの巻末の年表(p.222-223)にも写真入りで紹介されているレイチェル・カーソン著「沈黙の春は、環境問題に初めて警鐘をならしたという意味でよく取り上げられる本です。テストにも何度か出題されているので、食物連鎖、DDTと併せて覚えておきましょう。
 DDTは、農薬の一つで、食物連鎖の例としてよく紹介されます。水中に溶けだした微量のDDTが、植物プランクトン→小魚→大きな魚へと食物連鎖が進むなか、大きな魚の体内に水中のDDT濃度の16万倍にも濃縮されていたとの報告があります。そのため、現在は世界的に使用が禁止されています。
 ただ、DDTの危険性に関しては、疑問の余地もあり、2006年にWHOがマラリア予防の方法として、年に一度住居の壁面にDDTを塗布する使用方法を推奨しています。これは、DDTがマラリア撃退に有効であることが証明されているためで、適正量を使用すれば、有効活用できるとWHOが考えているからです。
 食物連鎖の例としては、後述する公害病で有名な水俣病でおきたメチル水銀の蓄積の方が恐ろしい例としてあげられます。工場から海へ垂れ流されたメチル水銀が、小魚に蓄積し、その小魚を食べた大きな魚でも濃縮されて蓄積され、毒性が強くなっていきました。そして、それらの魚を食べた人間が水銀中毒を発症した例です。

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