極限を持つもの持たないもの

 E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。

 数列1/nについて極限操作がどのような結果を生むかは具体的に予想できる。しかし、極限値がいくつか、あるいは極限値が存在するかどうかすらすぐに分からないことが多い。例えば、数列a_n=(2n+1)/(3n+4)n=1,2,3,\cdotsに対してa_n=3/7,5/10,7/13,\cdots)はn\rightar{\infty}のとき極限値2/3に近づく。このことは、分母と分子をnで割って得られる等価の式a_n=(2+1/n)/(3+4/n)を見れば分かる。すなわち、n\rightar{\infty}のとき1/n4/nも0に近づくから全体の式は2/3に近づくことが分かる。一方、数列a_n=(2n^2+1)/(3n+4)n=1,2,3,\cdotsに対して3/7,9/10,19/13,\dots)はn\rightar{\infty}のとき限りなく大きくなる。その理由は分子のn^2の項が分母より速く大きくなるためである。厳密に言えばこの数列は極限をもたないが、このことを\lim_{x\rightar\infty}a_n={\infty}と書き表す。極限値は(もし存在するなら)ある確定した実数でなければならないが、無限大は実数ではない。

 実際に、上記の式a_n=(2n+1)/(3n+4)a_n=(2n^2+1)/(3n+4)をエクセルで計算してみると、

n a_n=(2n+1)/(3n+4) a_n=(2n^2+1)/(3n+4)
1 0.429 0.429
2 0.500 0.900
3 0.538 1.462
10 0.618 5.912
50 0.656 32.474
100 0.661 65.793
1000 0.666 665.779
10,000 0.666 6665.778

となり、a_n=(2n+1)/(3n+4)は0.666つまり2/3に近づくことが分かるのに対して、a_n=(2n^2+1)/(3n+4)は限りなく大きくなっていくことがわかる。この無限大は普通の数と同じように四則演算ができない。ここに落とし穴がある。それについては、また来週記述する。