連続値域への拡張
E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。昨日のつづきです。昨日の記事はこちら。
彼(ネーピア)の考えの道筋は次のようであった:任意の正の数を、ある与えられた数(後に底と呼ばれることになる)の累乗として書くことができるなら、数の掛け算、割り算はその数の足し算、引き算に等価である。さらに、ある数をn乗する(すなわち、n回その数を掛ける)ことは、その指数をn回足す(すなわち指数をn倍する)ことに等価である。そして、ある数のn乗根を求めることはn回続けて引く(すなわちnで割る)ことに等価である。要するに、各算術演算が演算の階層の一つ下のランクの演算に変わり、それによって数値計算の煩雑さがぐっと減少する。
(中略)
任意の数(整数でも分数でも)が使えるときに、初めてこの方法が実用的になるのである。そうするには、整数の間の大きな隙間を埋めなければならない。それには、分数の指数を使うか、底として十分小さな数を選び累乗がゆっくり増えていくようにするか、の2通りの方法がある。で定義される分数の指数はネーピアの時代にはまだあまり知られていなかったから、彼は第2の方法を選ぶしかなかった。しかしどのくらい小さな底にしたらよいか?底が小さすぎると累乗の増え方が遅すぎてまたも実用的でないものができてしまう。1に近いが近づきすぎない数が妥当なところであろう。何年もの間この問題と取り組んだ後、ネーピアは底を0.9999999、すなわちに定めた。
こうして、求められた対数表はネーピアの対数表と呼ばれている。ネーピアの対数表は、で、現代的な定義、とは異なっている。また、ネーピアの対数表では、対数演算の基本法則(例えば、積の対数は個々の対数の和に等しい)が成り立たない。それと、ネーピアの対数表では数が大きくなるにつれて、ネーピアの対数は小さくなるが、現代的な対数表では大きくなる。
我々が習った対数表は、現代的な対数表だが、計算機が発明されるまで、数値計算の道具として使用されていた。いかに掛け算や割り算が面倒であったかを物語っている。