映画「ダ・ヴィンチ・コード」にまつわる動き

 映画「ダ・ヴィンチ・コード」に関して、いくつかの動きがある。まず、中国での対応、『「ダ・ヴィンチ・コード」、中国で一斉に上映中止』。

「ダ・ヴィンチ・コード」、中国で一斉に上映中止


 【北京=末続哲也】中国国内の映画館は9日、キリストの描写などをめぐり国際的な論議を呼んでいる話題の米映画「ダ・ヴィンチ・コード」の上映を一斉に打ち切った。
 中国当局が上映中止を急きょ命じたためで、国内カトリック教徒の反発に配慮した結果と見られている。
 北京の映画館関係者は同日、本紙に「9日からの上映中止を求める当局側からの通知を最近、受け取った」と語った。同日付の中国英字紙チャイナ・デイリーも上映中止を報じた。
 同紙は、上映中止の理由を「国内映画の上映推進」と伝えたが、中国政府公認のカトリック教会「中国天主教愛国会」が先月18日に同映画のボイコットを呼びかけるなど、国内に1200万人いるとされるカトリック教徒の反発が表面化していた。
 一方、中国で同映画は先月19日に封切られ、すでに1億400万元(1元は約14・2円)を売り上げ、中国での映画売り上げ歴代2位の「パール・ハーバー」の1億500万元に迫る大ヒットになっていた。


(2006年6月10日20時34分 読売新聞)

 中国は、暴動の火種を作りたくないのだろう。時期オリンピックまで、暴動の火種となりうる種に関しては、慎重に対応していこうとしているように思える。確かに、日本バッシングの様に、不特定多数が集まる暴動よりも、宗教信を持った人たちの暴動の方が国家としてはやっかいなのであろう。中国政府の対応は迅速だった。
 次に、フィリピン。

「ダ・ヴィンチ・コード」、R18指定に…フィリピン


 【マニラ=遠藤富美子】カトリック教徒が国民の8割以上を占めるフィリピンで16日、比大統領府の映画・テレビ審査委員会が、世界的なベストセラー小説を映画化した「ダ・ヴィンチ・コード」を18歳以上向けの「R18指定」とした。
 「真実と虚構を区別できるのは大人だけ」(マリッサ・ラグワルディア委員長)というのが理由で、波紋を呼びそうだ。
 小説は、イエス・キリストマグダラのマリアとの間に子どもをもうけ、その系譜が続いているという筋書き。米俳優トム・ハンクスさん主演で映画化も実現し、フィリピンでは18日に封切られる予定になっている。
 同国では、社会に大きな影響力を持つフィリピン・カトリック司教会議も、映画封切りを前に「キリスト教の教義にかかわる根本的な真実に対し、誤った印象を与えている」として、批判的な声明を出している。
 ただ、当局の規制にもかかわらず、市民からは「R18指定でも、海賊版で見る若者がいるだろう」(マニラの会社員)と、規制の効果を疑問視する声も挙がっている。


(2006年5月17日0時35分 読売新聞)

 読売新聞は、R18禁にすることでどのくらいの効果があるのか疑問視している。映画自体はまだ見ていないが、原作を読むかぎり、R18禁に値する内容を扱っているのは事実だ。しかし、映画がその部分をどう表現しているかは、見てみないと解らない。少なくとも、原作では、過激な描写は避けられている。
 この小説のテーマは、まさしく宗教と性の問題。特に、女性に対する差別を取り上げられている。宗教上の女性差別の歴史を語る場合に、性の問題をどう取り上げるかはどうしても必要になってくる。それは、人間として、いや生物として、生殖活動を種を保存する営みとして理解する必要があるからだ。この部分に関しては、このブログの批評が詳しい。
『ダ・ヴィンチ・コード』 (2) − グノーシス獲得としてのセックス