WHO刊行「BSEの脅威について理解する」⑤

3. 悪名高く、謎の多い一連の病気から

 BSEは進行性の神経組織の変性を特徴とする牛の伝達性脳疾患である。この病原体は特殊であって、まだ十分に解明されていない。しかしこの病原体は、ヒツジやヤギのスクレイピーの病原体と類似している。スクレイピーについても同様にまだ解明されていない点が多いが、250年も前から知られており、オーストラリア、ニュージーランド、および南アメリカの一部の国々を除き世界中で報告されている。スクレイピーがヒトに感染したという報告はない。

BSEは進行性の神経組織の変性を特徴とする牛の伝達性脳疾患であり、まだ十分に解明されていない。この病原体はヒツジやヤギのスクレイピーの病原体と類似している。スクレイピーは250年前から知られているが、人に感染したという報告はない。

 スクレイピーの病原体に汚染された飼料を通して、種の壁を越え、牛にそれが感染したのがBSEの起源ではないかと一部の科学者は推測している。他の科学者の中には、ウシにおける初の発症例、あるいは兆候的な症例がウシの遺伝子変異によるものだと考えるものもいる。また他には、と体残さ処理工程(レンダリング)の変化が感染物質の集積に作用したとする説もある。いずれにしても現在までのところ、牛は一般にBSEに対する感受性が高いと考えられている。

BSEの起源には、様々な仮設があるがまだ明確になっていない。しかし、牛は一般にBSEに対する感受性が高いと考えられている。

 BSEスクレイピーは、両者とも伝達性海綿状脳症(TSE)として知られる、一連の悪名高い病気の部類に属している。この症状はどれも中枢神経系を冒し、脳の組織に独特なスポンジ状の変化をもたらす。最近の研究では、摂取後に感染が消化管から末梢神経を通じて脊髄に広がり、最終的に脳に至ることが示唆されている。TSEの部類に属する病気はすべて不治の、例外なく死に至る病である。TSEはすべて感染性であるが、感染の形態は動物種や病原体の種類によって異なる。

 BSEスクレイピーは、両者とも伝達性海綿状脳症(TSE)として知られている。この症状はどれも中枢神経系を冒し、脳の組織に独特なスポンジ状の変化をもたらす。TSEの部類に属する病気はすべて不治の、例外なく死に至る病である。TSEはすべて感染性であるが、感染の形態は動物種や病原体の種類によって異なる。

 家畜反芻動物(ウシ、ヒツジ、ヤギ)とは別に、他の海綿状脳症は、シカ、エルク、ミンク、動物園で飼育されている動物(ニアラ、ゲムズボック、クドゥ、バイソンなどの野生反芻動物、ピュ−マ、トラといった大型ネコ科動物、サルなど)、飼い猫、そしてヒトでも確認されている。ヒトへの感染は極めて稀である。

 海綿状脳症は、家畜反芻動物の他に、シカ、エルク、ミンク、動物園で飼育されている動物、飼い猫、そしてヒトでも確認されている。ヒトへの感染は極めて希である。

BSEはその大部分が謎の部類に属する新しい病気である。めざましい研究の進歩にも関わらず、科学は、いまだに全ての疑問に確実に答えることができない。
 この感染性因子の実体は、未だに近代生物学における最大の謎の一つである。感染性ではあるが、ウイルスやバクテリアなど他の病原体とは異なり、免疫反応や炎症反応を宿主に引き起こすことはない。これに関して最も広く受け入れられている説は、この病気が「プリオン」によって引き起こされているという説である。プリオンは、細胞内の正常型タンパク質を異常型に変えることにより、宿主に感染する異常タンパク質である。異常化したタンパク質は脳に蓄積し、脳の損傷がスポンジ状となって現れる。

 TSEは、感染症であるが、ウィルスやバクテリアなどの他の病原体と異なり、免疫反応や炎症反応を宿主に引き起こすことはない。最も広く受け入れられている説は、この病気が「プリオン」によって引き起こされていると言う説である。プリオンは、細胞内の正常型タンパク質を異常型に変えることにより、宿主に感染する異常タンパク質である。異常化したタンパク質は脳に蓄積し、脳の損傷がスポンジ状となって現れる。

 全てのTSEの病原体は、加熱処理や化学殺菌などの不活性化処理に非常に抵抗性があることが知られている。ある研究によると、TSEの病原体は360℃の乾燥状態の加熱に一時間さらされても死滅しないという。また、別の研究では、プリオンは600℃の加熱処理の後でも感染性が残っていた。

 全てのTSEの病原体は、加熱処理や化学殺菌などの不活性化処理に非常に抵抗性があることが知られている。