<span style="font-weight:bold;">京都議定書の概要</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 「気候変動枠組条約」の目的を達成するために、「気候変動枠組条約締約国会議」の第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議:COP3)が、1997(平成9)年12月、京都で開催されました。この会議において、先進国などに対し、具体的数値目標を設定して温室効果ガス削減を義務づける、温室効果ガス削減に関する「京都議定書」が採択されました。
 京都議定書の概要は、次のとおりです。

対象ガス(6ガス)
…二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC,SF6
削減基準年…1990年
目標達成期間…2008年から2012年
削減目標…先進国全体で5.2%

p.90

 1992年に地球サミットで署名の始まった「気候変動枠組条約」の目的を達成するため、京都で第3回締約国会議(COP3)が行われました。1997年のことです。
 ちなみに、COPは、Conference of the Parties の略です。条約を結ぶことを締約といいます。そして、締約国が集まったものをパーティーズと一般的には呼ぶそうです。
 この会議では、京都議定書として、先進国などに対しての具体的な目標が設定されました。
 まず、温室効果ガスとして、6つのガスを決めています。
 それから、削減基準年を1990年目標達成期間を2008年から2012年と定めています。一昨年から達成期間に入っています。
 そして、削減目標を先進国全体で5.2%としています。日本の削減目標は、6%ですが、先進国全体では5.2%であることを覚えておきましょう。

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<span style="font-weight:bold;">京都議定書の目標達成方法の特徴</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 京都議定書の意義は、各国が法的拘束力のある具体的数値目標を設定することに合意したことにあります。これは大きな第一歩です。目標達成のための主要な方法は、次のとおりです。

  1. 自国の経済の各部門における省エネルギーの推進
  2. 持続可能な森林経営、新規の植林、再植林による二酸化炭素の吸収の促進
  3. 再生可能エネルギーなどの低炭素型エネルギーの開発、供給の促進
  4. 京都メカニズム”といわれる経済的手法による目標達成

 共同実京都メカニズムとは、市場原理を活用し、国際的な排出量削減コストの平均化を図ることにより、排出削減費用をなるべく低くおさえる経済的手法をいいます。共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)、排出量取引(ET)の3つのしくみがあり、京都議定書の目標達成方法の特徴といえます(図表3ー3、3ー4、3ー5、3ー6参照)。p.90

 京都メカニズムは、重要です。理解するまで読み込みましょう。
 まずは、共同実施(IJ)これは、先進国と先進国との取引です。これによる先進国全体の排出枠は変わりません。ただし、国毎の目標には、関係してきます。
 先進国が共同で行った温室効果ガスの削減プロジェクトなどをいいます。発電施設の運用改善、再生可能エネルギーの利用、植林事業などがあげられます(図表3−3、図表3−4参照)。
 次にクリーン開発メカニズム(CDM)。これは、先進国と途上国の間で行われます。先進国と途上国との共同プロジェクトによる排出削減について、承認された排出削減量が取引されます。つまり、先進国と途上国とで行った排出削減枠を先進国が行ったものに加えることができるというものです。ただし、それには途上国の同意が必要です(図表3−3、図表3−5参照)。
 最後に、排出量取引(ET)。これは、先進国と先進国間です。先進国間で排出枠の譲り受けが可能ということです。言葉の意味そのままです。
 もともと、先進国しか削減目標が設定されていないのですから、共同実施と排出量取引は、先進国同士の取引となります。クリーン開発メカニズムだけが、途上国との共同作業で先進国が排出削減を行えるメカニズムです。

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<span style="font-weight:bold;">京都議定書の数値目標達成に向けての課題</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 日本の数値目標は、基準年である1990年度の排出量12億6,100万トンに対して6%の削減です。しかし、現実には2007年度の温室効果ガス排出量は13億7,400万トンで、1990年度に比べ約9.0%増加しています。なお、2008年度の排出量(速報値)は12億8,600万トンで、1990年度に比べて1.9%の増加となっています。しかし、前年度に比べて6.2%と、大幅に減少しています。これは、景気後退にともなう産業部門をはじめ各部門におけるエネルギー需要の減少などが原因とみられています。6%削減の目標達成に向け、いっそうの努力が求められています。
 京都議定書では、法的拘束力をもった削減策は図表3ー2にある「気候変動枠組条約の附属書I国(40カ国・地域)のみを対象としていました。しかし、ポスト京都を考えるときh、途上国(非附属書I国)も視野に入れる必要があります。特に、2007年実績で米国を抜き、世界でもっとも二酸化炭素を排出している中国(21.0%)の対応は、大きな影響を与えます。また、世界第2位である米国(19.9%)は、京都議定書を批准しておらず、今後の課題として残りました。p.91

 日本の数値目標は、先ほど書いたとおり、1990年度比で6%です。去年までのテキストだと、2005年度までしかデータがなかったため、減少しているどころか約7.8%も増加しており、実際には、13.8%も減らさなければならないと書かれていました。
 今回のテキストでは、2008年度の速報値が記載されており、1.9%の増加に留まっています。しかし、温室効果ガスの削減量は、景気に左右されます。リーマンショック以降の不況が温室効果ガス削減には、プラスに働いたと考えていいと思います。
 逆の見方をすれば、景気回復を願うのであれば、よりいっそうの削減努力を行わなければなりません。
 京都議定書の問題点は、排出量第1位の中国と排出量第2位のアメリカが入っていないことです。最も多く排出している国々を抜きに運用してもその効果は限定的といわざるを得ません。

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”<span style="font-weight:bold;">ポスト京都議定書”に向けたバリ・ロードマップ</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 2007年12月にバリ(インドネシア)で開催されたCOP13・COP/MOP3において、2013年以降のポスト京都議定書の合意に向けたバリ・ロードマップ(バリ行動計画)を採択しました。具体的には、「気候変動枠組条約」のもとに、「長期的協力の行動のための特別作業部会」(AWG−LCA)を立ち上げ、2013年以降の枠組みについての交渉の「道筋」を示し、2009年12月にコペンハーゲン(デンマーク)で開催されるCOP15・COP/MOP5を交渉期限と定めたものです。p.92

 去年、なぜコペンハーゲンで開催されたCOP15が注目されていたのかは、京都議定書で定められた達成期間後の対応をCOP15まで決めるとしたこの合意があったからです。

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”<span style="font-weight:bold;">ポスト京都議定書”をめぐる各国政府の動き</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 温室効果ガス排出削減の中期目標をめぐり、欧州連合(EU)は早い段階から、2020年までに1990年比20%削減で合意し、ポスト京都議定書の数値目標として提案しています。米国のオバマ大統領就任後に2020年までの中期目標として2005年比で14%削減を打ち出し、日本は鳩山首相就任後の2009年9月に2020年までの中期目標として1990年比25%削減を発表しました。米国は排出削減目標の基準年を2005年とするのに対し、日本はEUと同様に京都議定書と同じ1990年とすることを主張しています。
 2007年6月に開催されたハイリゲンダム(ドイツ)からG8サミットにおいて、地球温暖化対策が主要議題のひとつとして扱われ始めました。2007年以降のG8サミット首脳宣言を振り返ってみます。
2007年6月 ハイリゲンダム(ドイツ)
 「2050年までに温室効果ガスの排出量を少なくとも半減させることを含むEU、カナダ、日本による決定を真剣に検討する」
2008年7月 洞爺湖(日本)
 「2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも50%削減する目標を気候変動枠組条約締約国と共有し、検討・採択することを求める
2009年7月 ラクイラ(イタリア)
 「洞爺湖サミットで合意した、世界全体で2050年までに温室効果ガスを50%削減する目標を再確認し、先進国全体で1990年またはより最近の複数の年と比較して2050年までに80%、またはそれ以上削減するとの目標を支持する。工業化以前の水準からの世界全体の平均気温が2度を越えないようにすべきとする広範な科学的見地を認識」
p.92-93

 ここでは、地球温暖化対策がG8サミットでも主要な課題の一つとなっていることを覚えておきましょう。

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<span style="font-weight:bold;">コペンハーゲン合意−ポスト京都議定書の合意は先送り</span>

 改訂2版「eco検定テキスト」(東京商工会議所編著)からの引用。

 COP15・COP/MOP5では、「コペンハーゲン合意」の全会会合では採択が断念され、同合意に「留意する」ことが決定されました。バリ・ロードマップで予定されていたポスト京都議定書の新しい国際的枠組みの合意は実現できず、2010年以降に先送りとなりました。
 「コペンハーゲン合意」への参加は任意で、2010年1月末日まで、先進国は京都議定書よりも強化した2020年までの排出削減目標を、途上国には緩和行動を自主的に策定し、同合意の別表への記載・登録を求めています。コペンハーゲン合意にもとづく国際的取り組みを発展させ、法的拘束力のある枠組みにつなげることは、今後の課題として残されています。その他の主な合意内容は、次のとおりです。

  1. 排出削減の長期目標として、世界の気温上昇を2℃以内に抑える
  2. 先進国から途上国への資金援助として2010から2012年に総額300億ドル、2020年までに年間1,000億ドルの拠出をめざす。
  3. 途上国が技術、資金援助を受けた場合は、国際的な監視を受ける。

p.93

 2013年度以降については、先送りされている状態です。ただし、明確化しつつあるのは世界の気温上昇を2℃以内に抑えることが必要であることで、それに向けた各国の役割が問題となっています。

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