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感銘を受けた本を読んで思うこととは

 自分の生き方や考え方に大きく影響を及ぼしてくれる本に出会う機会は、そんなにあるものではないと思う。自分の場合、一年に一冊出会えれるかどうかだ。だからこそ、そういう本に巡り会えると深い感動を覚える。そして、最近、そういう本にまた出会った。それが、リンダ・グラットン氏の本「ワークシフト」だ。五つの要因( テクノロジーの変化、グローバル化の進展、人口構成の変化と長寿化、社会の変化、エネルギー・環境問題の深刻化)をもとに、どういう社会が訪れ、我々の仕事の仕方がどう変わっていくかを予測し、それに対してどう立ち向かうべきかを考えさせてくれる本だ。
 内容に関して触れると長文になるので省略するとして、この手の本には、いくつかの特徴がある。今回はそれについて述べてみたい。
 一つ目は、いままで自分が感銘を受けた本どうしには、どこかつながりがあるということ。
 たとえば、今までに感銘を受けた本をいくつか列記すると、ジェームス・スロウィッキー著「みんなの意見は案外正しい」、クリス・アンダーソン著「フリー」、「メイカーズ」、レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース共著「シェア」、ジェフ・ジャービス著「パブリック」などがある。
 これらの本が予想している未来と「ワークシフト」の予測している未来には、かなりの共通点がある。もちろん、本を選んでいるのは自分であるから、自らの好みによって選んでいるという共通点はある。しかし、おもしろいのは、アマゾンの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の項目にこれらの本が現れるのである。アマゾンが自分の好みをピンポイントで探し当てているとは考えずらい(ある程度は合っているかもしれないが、本以外の商品も見る限りかなり外れている。また、全ての本をアマゾンで買ったわけではない。)。
 逆に、この手の本を選ぶ側に、ある共通点があるように思えてならない。個々に列記した本は、みなベストセラー本だ。従って、誰もが興味をそそられたということかもしれない。しかし、そこには万人を引きつけるだけの共通性があるのではないだろうか。
 その共通性とは、群衆による選択が大きな力を持ち始めているということだ。カリスマ性の高い数少ない人間が社会を形成していく時代は終わり、数限りなく存在する世界中の天才たちの知恵が集結して世の中を動かし出す。しかも、この変化の速度が、指数的に増加していく。そういった考え方がこれらの本には垣間見られる。そして、誰もがそうなるだろうなと考えはじめているのではないだろうか。
 二つ目は、参考文献をチェックすると次に読むべき本が見つかるということ。
 欧米などの海外で書かれた本の場合、参考文献の記述がしっかりしている。一冊の本を書くために、作者が尋常でない数の本を読み、研究していることがうかがえる。こうした参考文献は、作者が結論を導いた道のりを探ることを可能にしてくれる。「考え方の根本に何があるのか」を調べることが可能になるのだ。そうした参考文献では、作者が述べたいこととはまた別のテーマを持っていることが多々ある。
 読者が、参考文献が持つテーマに新たに興味を抱けば、また違った方向に思考を巡らすことが可能になる。
 例えば、今回の「ワークシフト」では、未来テクノロジー予測の文献として、レイ・カーツワイル著「ポスト・ヒューマン」が載っている。この参考文献には、テクノロジーの指数的発展とその先に訪れるだろう特異点の話が載っているらしい。こうなると、「テクノロジーの進展はどういう世界を実現していくのか」という、別の興味が次第にわいてきてその本を読んでみたくなるのだ。
 よい本の場合、こうした違ったテーマへの誘導路がいくつも存在する。そして、それら参考文献を読むことで、知識の巾が広がっていく。
 ただ、リンダ・グラットンも言っているように、ただ、幅広く浅い知識を取得するだけでは意味をなさない。それらを元に自分なりの考え方をまとめていく作業が必要になる。
 しかし、そうした思考を続ける場合においても、効率的に必要な知識を手に入れることを可能にしてくれるのが、こうした文献だと思う。少なくとも、一から探すよりはかなり効率的に欲しい情報を得られる。
 作者が訴えたいことに共感できるから感銘を受けるのであるが、付録として、感銘を受ける本には、こうした道しるべがいくつも存在するから、なおさらおもしろいのかもしれない。
ワーク・シフト (孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>)

ワーク・シフト (孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>)