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『あっ、それおもしろい』っていう好奇心

覚書

 石田衣良著「池袋ウエストゲートパーク (文春文庫)」(文春文庫)サンシャイン通り内線より

「なんのために? あんたはこの街でなにがやりたいんだ」
「どこかでおかしなことが起こっていたら、私はそれを大勢の人に知らせる。それが仕事なの。それでみんなの注意が集まり、事態はよくなるかもしれない、変わらないかもしれない。私にはそこまでわからない。でも私はやるわ。まず伝えなくちゃ、絶対なにも変わらないもの」
「伝えることで悪くなるってことは?」
「もちろん、それもある。でもね、マコトくん、私たちは目のまえで起きていることに目をつぶり、口を閉ざしてはいられない生きものだよ。いいことも悪いことも『あっ、それおもしろい』っていう好奇心から、すべて生まれたんだから」
 キュリオシティ・キルド・ア・キャット。そんな名前のバンドがあったよな。だが、甘いことをいう加奈が、おれにはすこしまぶしかった。まえむきな大人を見るのは久しぶりだったからかもしれない。

 『あっ、それおもしろい』っていう好奇心をもし人間が持っていなければ、今のような文明は生まれなかったかも知れない。他人の行為に興味を持ち、物まねをすること、それこそが人間の原点だから。