日本製品には何がかけているのか

 奥山清行著「伝統の逆襲―日本の技が世界ブランドになる日」からの引用。

 日本の場合、そういった安全性や信頼性、品質のばらつきのなさという点では完成されている。不足しているのは、「どうしても欲しくなる」という部分、たとえば官能的なエンジンであったり、スタイリングだったり、そのクルマの持つ物語性といったことである。

 確か、奥山さんの名前を知ったのは、NHKの番組「プロフェッショナル仕事の流儀」だったと思う。まだ、ピニンファリーナいた頃の奥山さんを取材したものだった。番組は、フェラーリをデザインしたはじめての日本人として物語性を持たせた内容だったことを覚えている。
 日本の生産現場では、確かに安全性・信頼性・品質管理といった言葉が生産のキーワードとして張り上げられていたりするが、魅力あるラインとか、いかにこの製品が作り込まれてきたのかといった部分は全く強調されない。とくにいかにこの製品を作り込んできたかは、ノウハウの流動につながるとして、どちらかというと敬遠されがちな内容になってしまっている。
 でも、買う立場になればこのような物語性を持った製品の方が欲しくなるものだと思う。「どうしても欲しくなる」商品とは、奥山氏が言っているように、感性に訴えかけるもの、その魅力に引き込まれる物語性があることだと思う。