腕の筋肉

 八木一正著「小娘たちに飛距離で負けないための授業―物理の力で宮里藍を抜け!HS40で250ヤード打法 (ゴルフダイジェスト新書)」から引用。

 腕の筋肉は、端が前腕の骨の上と下につながっています。筋肉はよくバネに例えられますが、本質的にバネとは異なります。人間が動くためには、筋肉が伸びたり縮んだりする必要があります。筋肉が力を出すためには縮むことが必要です。縮む力で前腕の骨を引っ張るのです。ですから、腕を曲げる時には上側の筋肉が縮むことで腕が曲がり、伸ばす時には下側の筋肉が縮んで腕が伸びるというメカニズムになっています。
 では、この両方を一度に縮めようとすればどうなるでしょうか。それが実は「力んだ」状態で、物を支えたり、衝撃を受け止めたりするために有効なのですが、スムーズに曲げ伸ばしするときには邪魔になってしまうのです。これはよく「回転ドアを両方から引っ張っている状態」に例えられます。上手にドアを回転させるためには、片一方が引っ張るのをやめなければなりません。
 筋肉はこのように二つの力がペアになって、いつもけんかしています。専門的に言うと、目的通りに動かす方を主働筋、邪魔する方を拮抗筋と呼びます。この両者の協調関係が成立していないと大変なことになります。それを数量的に例えると、次のようになります。パワーを出すために、100%のバカ力を上の筋肉に働かせようとすると、その影響で体全体が硬直して力みます。その時、反対側の下の筋肉までもつられて70%の力を出したとしましょう。すると、力関係は100−70=30で、差し引き30%の力しか出ないことになります。一方、下の筋肉が完全に脱力することに協力してくれて、上の筋肉がリラックスして70%の力を出すと、力関係は70−0=70で、差し引き70%の力が出せることになります。どちらが有利なのかは、一目瞭然。そう言う意味でバカ力は無力なのです。
 実際はこのようにいかなくても、意識的に協調関係を作り出すことが、筋肉を最大限に使い、飛距離を最大にアップさせることにつながります。7割の力が最大のパワーを引き出せるというのは、それが、筋を痛めることもなくいちばん安定して力が出せるからであり、拮抗筋が脱力できる程度の力でもあるからなのです。

 ゴルフのスウィングをするとき、どうしても力んでしまう。力んでしまうと、当然バランスが悪くなるし、思ったような軌道に振り下ろすことができない。頭の中では、わかっているのだが、そう修正すればいいのかわからなくなる。
 とくに、スウィングを修正するためにある形を作ろうとすると余計力んでしまう。力を抜くということは難しいと思っていた。
 筋肉が対になっていて、両者が対立関係にあることは、何かで読んだ気がするが、完全に忘れていた。縮む方の筋肉だけが体の動きに関係しているのならば、ここに書かれているように、対立関係を協調関係に切り替えて筋肉を使用するしかない。そのためには7割の力でなければ、行けないのであればそれ以上力を入れても無駄だと思いこむしかない。
 ただし、7割の力とははたしてどのくらいなのだろう。