ゴルフの場合、重心はどこにあるのか

 八木一正著「小娘たちに飛距離で負けないための授業―物理の力で宮里藍を抜け!HS40で250ヤード打法 (ゴルフダイジェスト新書)」から引用。

 かつて、頭は体の中心で、そこを動かすと目線や軸がズレるから、「頭を動かすな」といわれていました。しかし、この軸という考え方にも誤解がありそうです。
 二人の人物が向かい合って、両手をつないで輪を描きながらクルクル回って踊っているとしましょう。この時、軸があるとせれば、これはそれぞれの人物ではなく、二人の真ん中に重心Gがあり、その空間に立てた棒が回転軸となります。この時、二人の体は外向きの遠心力で引っ張られ、それを引き合う手で支え合っているのです。
 次にハンマー投げのようにものすごく重い球を振り回している場合を想定して下さい。この場合、ハンマーは人より軽いので、人と人の時より重心Gの位置はかなり体の近くにあるはずです。この時もハンマーと選手は向かい合い、両者の遠心力で引っ張り合っていることになります。世界の室伏広治選手の場合、体が小さいのでハンマーの遠心力に負けやすい。そこで「倒れ込み」という技を使い、体を反らし、急角度で踏ん張ることでハンマーの引っ張る力に耐え、世界一になったそうです。
 ゴルフの場合はどうでしょう。クラブはハンマー投げのおもりを軽くした状態と考えることはできないでしょうか。重い両腕を前に突き出しているので、スウイングの重心はハンマー投げの時よりもっと体に近く、ちょうど胸の辺りになります。つまり、ゴルフの場合の重心G、そして回転軸は胸の前、いわゆるふところなどと表現される場所にあるわけで、決して背骨になることはありません。ですから、背骨にスウイングの軸があるという前提はきわめて怪しくなります。またこうなると、頭を動かすと軸がブレるというのも、あり得ないことです。さらに、「重心系の運動」の考えからすると、必ずしもナイスショットに軸は必要ありません。重心さえあればいいのです。もしとばそうと思うのであれば、重心を意識し、インパクトの前後だけでも重心を揺らさないようにすれば、エネルギーロスが防げて、飛距離が期待できるのです。

 「背骨に軸がある」、「左足の内側に軸を作る」などと、ゴルフ雑誌などによく書かれているのを目にする。この場合の軸は、体を回転するときの軸という意味で使用されているのだと思う。しかし、ここで言っているように、大事なのはスウィングの重心であって、体とクラブを一体とした回転運動の重心なのだ。この重心がインパクトの前後で不同ならば、エネルギーを確実にボールに伝えることができるはずだ。
 その為には何をすればいいのか。それが問題なのだ。