天才が移り住む町

 マーカス・デュ・ソートイ著「素数の音楽 (新潮クレスト・ブックス)」を読んでいると、二つの場所が、数学のメッカとして登場する。一つめが、ドイツのゲッティンゲンであり、二つめが、アメリカのプリンストン高等研究所である。この二つの場所は、第二次世界大戦を境に、主役の座が入れ代わる。第二次世界大戦以前はドイツのゲッティンゲン大学が数学の舞台だった。ガウスをはじめ、リーマン、ヒルベルトなど名だたる数学界の天才達がこのゲッティンゲンで、世紀をまたいで活躍していた。数学の新たなる発見は、この町で生まれていたようだ。ところが、第二次世界大戦が始まって、ナチスによる迫害が始まると、ゲッティンゲンに集まっていた数学者達は、アメリカに逃げる。そして、天才達が集まったのが環境が整っていたプリンストンだった。
 戦後、アメリカが急激に科学や数学の分野で中心となったのには、こうした天才達の移住が関係していたようだ。
 もし、ドイツが第二次世界大戦を起こしていなかったならば、以前ゲッティンゲンが数学のメッカだったのかもしれない。