不連続な突然変異(自然淘汰の行われる根拠)
E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。
ダーウィンは、最も均質な集団の中にさえも必ず現れる小さな連続的な偶然変異がもとになって自然淘汰が行われると考えたが、今日ではこの点に関してはダーウィンが誤っていたことがはっきりしている。なぜなら、そのような偶然変異は遺伝しないことが証明されているからである。
いまから約40年前(1900年頃)にオランダ人ド・フリースは、完全に純粋種のものの子孫にさえも、小さいが「飛び離れた」変化をしたものがごく少数、例えば何万に二つとか三つとかの割合で出現する、ということを発見した。「飛び離れた」という言葉は、変化の起こっていないものとごく少数の変化の起こったものとの中間のものがまったくない、という意味で不連続性があることを意味している。ド・フリーズは、それを突然変異と名づけた。
突然変異は、遺伝子という分子の中で起こる量子飛躍によるものである。
ここで言っている連続的な変異と不連続な変異は、ちょっとわかりにくい。連続的な変異とは、例えば、イネなどの植物を育てると、当然の事ながら背の高いものもあれば、低いものもある。そして中間的なもの存在する。育てたイネのうち、背の高いものの種だけを集め、それを植えてもイネの背丈の平均は変わらないということを指している。従って、イネが何らかの変異を起こす場合は、不連続に起こる突然変異が元になっているという話しである。
この突然変異は、遺伝子の中で起きるとシュレーディンガーはいっている。
前回までのE.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約
- E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞
- 統計物理学からみて、生物と無生物とは構造が根本的に異なっている
- 原子はなぜそんなに小さいのか?
- 生物体の働きには正確な物理法則が要る
- 物理法則は原子に関する統計に基づくものであり、近似的なものにすぎない
- 法則の精度は、多数の原子の参与していることがもとになっている
- 第二の例(ブラウン運動、拡散)
- 測定の精度の限界
- 分子数の平方根の法則
- 古典物理学者の予想は、決して詰まらぬものとは言い捨てられないが、誤っている
- 遺伝の暗号文(染色体)
- 生物体は細胞分裂(有糸分裂)で成長する
- 有糸分裂では、すべての染色体がそれぞれ二つになる
- 減数分裂と受精(接合)
- 遺伝子の大きさの限界