古典物理学者の予想は、決して詰まらぬものとは言い捨てられないが、誤っている

E.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約。

 生物、および生物が営む生物学的な意味合いをもつあらゆる過程はきわめて「多くの原子からなる」構造をもっていなければならない。そして、偶然的な「一原子による」出来事が過大な役割を演じないように保障されていなければならない。それ故にこそ、生物体は、そのすばらしく規則的な秩序を持ち、整然とした働きを営むに必要十分に厳密な物理法則を維持することができるのだ。
 この書物でこれから説明するように、ちょっと信じられない少数個の原子からなる集団、あまり少数なので、厳密な統計的法則などはとても示しそうもない原子団が、生きている生物体の中できわめて秩序のある規則正しい現象を支配するような役割を、確かに演じているのだ。これらの原子団が、生物が成長の過程で獲得する直接眼に見えるような特徴を支配しており、生物体の働きの重要な特性を決定している。そしてこれらのことすべてにわたって、極めて鋭い非常に厳密な生物学的法則が行われている。

 第二章の「遺伝のしくみ」に入ってきた。題名と内容が伴っていないのは、要約のしかたが悪いからだと思う。お許し頂きたい。
 前章では、統計物理学からみると、生物と無生物は明らかに構造が違っていて、それは非周期性と周期性の違いであることがまず述べられ、我々の体の組織がなぜ原子に比べ非常に大きいものでなければならないかについて述べられていた。原子というものが予測がつかない動きをしていて、その影響を受けないためには、ある程度の大きさが必要になり、そこには秩序が必要だということも述べられている。
 第二章からは生物学に関する当時(1940年代)までに得られている知識を整理するかたちで紹介している。
 ここで、示されているのは、第一章の考察から得られた部分と違って、そんなに多くの原子の集団が生命を維持しているのではなく、もっと少ない原子の集団が生物の働きの重要な特性を担っていることが明示されている。そして、それは非常に秩序だった生物学的法則によって行われていると述べられている。

前回までのE.シュレーディンガー著「生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波新書 青版)」からの要約