等比数列と等差数列

 E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用。

 例えば、数列1,2,4,8,18,・・・は公比2の等比数列である。公比をqと書き、1から始めれば、数列の各項は1,q,q^2,q^3,等々(第n項はq^{n-1})となる。ネーピアの時代のはるか以前から、等比数列の各項と対応する公比の指数との間に簡単な関係が存在することは知られていた。ドイツの数学者ミハエル・シュティーフェル(Michael Stifel,1487-1567)は、自分の本Arithetica integra(算術大系,1544)の中で、この関係を次のような形で述べている:数列1,q,q^2,\ldotsの2項を掛けると、結果は対応する指数を足すのと同じになる。例えば、{q^2}\cdot{q^3}=({q}\cdot{q})\cdot({q}\cdot{q}\cdot{q})={q}\cdot{q}\cdot{q}\cdot{q}\cdot{q}=q^5であり、指数2と3を足せば結果が得られる。同様に、等比数列の1つの項をもうひとつの項で割る割り算は、指数の引き算に等価である:{q^5}/{q^3}=({q}\cdot{q}\cdot{q}\cdot{q}\cdot{q})/({q}\cdot{q}\cdot{q})={q}\cdot{q}=q^2=q^{5-3}。こうして単純な法則{q^m}\cdot{q^n}=q^{m+n}および{q^m}/{q^n}=q^{m-n}が得られる。
 しかし、q^3/q^5のように分母の指数の方が分子の指数より大きいときに問題が起こる。先ほどの法則によればq^{3-5}=q^{-2}ということになるが、この式はまだ定義されていない。この困難をくぐり抜けるため、q^{-n}1/{q^n}であると定義する。そうすればq^{3-5}=q^{-2}=1/p^2であり、q^3q^5で直接割って得られる結果と一致する(m=nのときにも法則{q^m}/{q^n}=q^{m-n}が成り立つようにq^0=1と定義しなければならないことに注意)。これらの定義を覚えておけば、両方向にどこまでも広がる等比数列\ldots,q^{-3},q^{-2},q^{-1},q^0=1,q^1,q^2,q^3,\ldotsが得られる。各項は公比qの累乗であること、指数\ldots,-3,-2,-1,0,1,2,3,\ldotsは等差数列(等差数列では相次ぐ項の差が一定−この場合は1)であることが分かる。

 この関係が対数の背後にあると著者は述べている。シュティーフェルが整数の場合しか考えなかったのに対して、ネーピアはそれを連続なものにまで拡張した。
 この続きは明日。