標準代謝量及びエネルギー消費量から見た人類

 平成7年度環境白書からの引用。

 人類を標準代謝量から見てみよう。標準代謝量とは、安静状態でのエネルギー消費量であり、一般に単位時間当たりの酸素消費量で表される。
 恒温動物の標準代謝量を調べ、体重との関係を見てみると(第1-1-12図)、一定の関係が見られ、人類もこの直線上に乗ってくるのである。人類も同じ恒温動物としての一存在であるためである。
 ところが、エネルギー消費量の観点から見ると、人類は極めて特異な存在であることがわかる。
 人類は、世界の平均値で見ると食料供給により約130ワットのエネルギーを消費し、また、人類に特有な食料以外のエネルギー消費として、約1,800ワットの一次エネルギー消費を行っている。人類の使用エネルギーと他の動物の使用エネルギーを一概に比較することできないが、日本人の場合では、一次エネルギー消費量は世界平均値の2倍程度であり、約2,000ワットが標準代謝量と考えると、同程度の標準代謝量を有する動物の体重は、概ね4トンになる。他の生物種と比較してエネルギー使用量の割合が大きいといえる。
 標準代謝量は、単細胞から多細胞へ、変温動物から恒温動物へという進化の過程でそれぞれ10倍に増加している(第1-1-13図)。この意味で、現代人のエネルギー消費が他の恒温動物よりさらに1桁大きくなったということから現代人という生き物が他の動物とは質的に違った生き物になったと考えられることが指摘されている。

 現在の地球の構成を分類すると、比重分離で生じた内核外核、下部マントル、上部マントル、大陸地殻の5つと、海洋地殻、海、磁気圏、大気、生物圏、人間圏を併せた10に分類できるという(松井孝典著「150億年の手紙」(徳間書店))。はたして、生物圏と人間圏を分ける必要がほんとうにあるのだろうか。酸素消費量と体重の関係を見ると、人間も恒温動物であり、他の恒温動物と変わりないことがグラフからわかる。しかし、エネルギー消費量の観点から見ると、人間は極めて特異な存在となる。日本人の消費エネルギーは、約2000ワットで、動物の体重換算すると約1トンのゾウをはるかに超える存在となってします。
 こうして、消費エネルギーの観点から見ると、やはり生物圏と人間圏を区別する必要があるのだろう。
 葛西栄輝・秋山友宏著「物質・エネルギー再生の科学と工学」にこんな記載がある。

 この関係を理解すると、「廃棄」とは、人間圏プロセスから、隣接する大気、海、生物圏、海洋・大陸地殻プロセスへの物質の流出を意味し、「採掘」とは地殻プロセスから人間圏への流入を意味している。

 まさしくそのとおりで、人間は、大陸地殻から石油を採掘し、最終的に二酸化炭素として大気圏に廃棄していることになる。今の消費エネルギーを減らさない限り、供給源は何であれ、二酸化炭素の排出量は減らないのだ。
 また、環境保護や動物保護は、消費エネルギーの高い人間圏に一時的に取り込むことを意味するのかもしれない。動物保護などは、何れ生物圏に返す必要があるのだと思う。