凶悪犯罪の増加はほんとうか?

 昨日書いたとおり、E.オマール著「不思議な数eの物語」の引用方法でまだ悩んでいるので、今日は小ネタを書く。
 最近、ニュースなどを見ているとニュースキャスターなどが凶悪犯罪の増加を指摘するのだが、本当なのだろうか。そこで、グーグルで「殺人事件 統計」で調べてみると、こんなサイトが見つかる。このサイトの一番新しいデータをみると、1972年以降のピーク時に比べ、1歳未満の赤ちゃんが殺害された事件が9割減、小学生以下が殺害された事件が7割減、小学生の場合が7割減となっており、特に子どもが殺害されるケースが増加しているわけではないことがわかる。注釈を見ると、警察庁の「犯罪統計書」を元にしているというのだからまず、信じてよいだろう。
 次に、警察白書を見てみると10万人あたりの凶悪事件数が掲載されている。警察庁のホームページで昭和42年以降の警察白書が見られる。ただし、10万人あたりのデータは昭和50年の警察白書から記載されていて、その前はただ、件数表示のみなので、昭和50年度の白書にある昭和40年(1965年)以降のデータしか見ることができない。
 凶悪犯は、殺人、強盗、放火、強姦に分類されていて、昭和40年のそれぞれのデータは、殺人2.2、強盗3.5、放火1.4、強姦6.6、凶悪犯総数13.8である。10万人当たりのデータだからそれぞれ10万人当たり2.2件。3.5件、1.4件、6.6件ということになる。この頃は、強姦が異常に件数が多かったことがわかる。多い順に並べると、強姦、強盗、殺人、放火の順になる。
 その後、凶悪犯件数は順調に減り始め、平成3年当たりが底となっている。平成3年のデータは、殺人1.0、強盗1.5、放火1.1、強姦1.3である。その後、強盗だけが増加し始め、平成15年にピークとなる。ちなみに、平成15年のデータは殺人1.1、強盗6.0、放火1.6、強姦1.9である。
 そして、最も新しいデータである平成17年は、殺人1.1、強盗4.7、放火1.5、強姦1.6となっている。
 殺人だけ見ると、平成元年までに順調に減少し、1.0になり、その後は1.0か1.1で推移している。人口が約1億人だとすると、1000件ぐらいが年間で殺人事件として起きていることになる。しかし、殺人事件が最近急激に増えているわけではない。
 一方強盗事件は、平成元年以降増え始め、昭和40年代に近づき始めていたが、平成15年をピークに下がり始めている。また、強姦は昭和40年代に比べ、7割減とかなり改善されていることになる。放火は、その頃とあまり変わっていない。
 少年による殺人事件も昭和20年代から30年代と比較すると1/4ぐらいに減っていて、犯罪の低年齢化は見られていない。データはここで見ることができる。
 こうして、統計データを見てみると、今報道されている犯罪に関する指摘は誇張以外の何ものでもないということがわかる。