16世紀から17世紀初めまでの変革期

 E.オマール著「不思議な数eの物語」より引用

 16世紀と17世紀の始めとに、あらゆる分野で科学の知識が大きく発展した。幾何学、物理学、天文学は遂に古い教義から解放されて、人々の宇宙の理解を急速に変えた。コペルニクスの地動説は、教会の権威に1世紀近く抵抗してようやく受け入れられ始めた。1521年マゼランの地球一周航海は海洋探検の新時代を告げ、世界の隅々に至るまで未踏破の地がほとんどなくなった。1569年にはヘルハルト・メルカトールが有名な世界地図を出版したが、これは航海術に決定的な影響を与える出来事であった。イタリアではガリレオ・ガリレイが力学の基礎を築きつつあり、ドイツではヨハネス・ケプラーが惑星の三つの運動法則を立てて、一挙に天文学をギリシャ人の天動説から解き放った。これらの発展に伴って数値的なデータはどんどん増加していった。そのため、科学者達は退屈な数値計算にたくさんの時間を費やさなければならなかった。時代は、一気に科学者をこの重労働から解放するような発明を求めていた。ネーピアはこの挑戦に応じたのである。

 ここで、登場するネーピアという人物は、ジョン・ネーピアといい、1550年にスコットランドで生まれた人で、対数の発明者とされている人物らしい。彼は、その著書「素敵な対数表の解説」の中でこう述べている。

 大きな数の掛け算、割り算、開平(平方根を求める)、開立(立方根を求める)・・・・。これほど数学的取扱いに煩わしくて、計算をする人達を悩ませ困らせるものはないと分かったので、確かで敏速な技術を使ってこの困難を取り除くことができないかと私は考え始めた。

 確かにこの時代、膨大な数値計算が求められていたのであろう。そして、それは単純作業であり、思考や実験などに多くの時間を割り当てたい科学者達にとっては、重労働だし、煩わしいものであったのだろう。今では、コンピュータを使うことができるので、そんなに時間のかからない計算も、この時代だと数日かけて計算するといったことが当たり前のように行われていたのかもしれない。
 E.オマール著「不思議な数eの物語」を読んでいて、思い出したことがある。対数表を使った計算である。高校生の頃なんて便利な方法だろうと思ったものだ。私が高校生の時は、まだ、計算機はあったが、パソコンは登場したばかりの頃で、当然その辺の高校生がいじれる環境にはなかった。関数電卓やプログラム電卓というものがあって、それを使って計算をするというのにあこがれていたが、購入できたのは大学に入ってからだった。
 計算尺というのもあったが、普通それを持ってる高校生はいなかったように思う。ひたすら紙と鉛筆(当時シャープペンはすでにあった)を使用して計算するのが普通だった。
 今の子ども達が、対数表を使うことはあるのであろうか?実生活では、対数表を使う等ということはなく、対数表を見る機会は全くなくなっている。当然、その存在すら忘れてしまっていた。当時の人達の苦労を考えると画期的な発明だったのだと思う。
 この本のないようについてどう伝えたらよいかを今悩んでいる。非常におもしろい本なのだが、そのまま引用すると非常に長い文章になってしまうので、まとめる必要があるのだが、その方法がまだ定まらない。もし、本に興味をお持ちの方がいたなら、直接本を借りたり買って読まれることをお勧めする。