科学報道を見破る十ヶ条
松永和紀さん著「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)」からの引用。
- 懐疑趣致を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する。
- 「○○を食べれば・・・・」というような単純な情報は排除する
- 「危険」「効く」など極端な情報は、まず警戒する
- その情報がだれを利するか、考える
- 体験談、感情的な訴えには冷静に対処する
- 発表された「場」に注目する。学術論文ならば、信頼性は比較的高い
- 問題にされている「量」に注目する
- 問題にされている事象が発生する条件、とくに人に当てはまるのかを考える
- 他のものと比較する目を持つ
- 新しい情報に応じて柔軟に考えを変えてゆく
五番目の体験談、感情的な訴えに対しての態度は、重要な気がする。とかく人は情に流されやすい。自分と同じような境遇にある人が述べると、誰しもが信じてしまう。例えば、小さな子どもを持つ親に対して、知人でもない人から「私にも小さな子どもがいるのですが・・・」などと切り出して、商品の宣伝をされても、ほとんど信用しない方がよいと思う。
次に重要なのが「量」の問題。量を明示していない情報は信じない方がよい。また、「量」が示されていてもグラフのマジックや統計のマジックを使って表現されていることが多いので、全体はアクできる「量」が示されているかをまずチェックする必要がある。特に、「最近、○○が増えている」といった情報には注意が必要だ。「過去5年」とかの短期的なデータは、示されているとおりに鵜呑みにするととんでもないことになる可能性がある。殺人事件の増加や自殺の増加などを伝える情報の場合、戦後移行のグラフとまったく違った傾向を示している可能性が高い。警視庁などが交通事故の情報を流しているときも、この量のマジックを使った表現がかなりなされている可能性があるので注意が必要だ。なぜなら、警視庁の場合検挙数が評価の対象になるため、都合がよいように期間を限定して情報を流している場合がある。最近では、飲酒運転などのデータでそういう傾向があったと記憶している。
八番目の「人にあてはまるのか」を判断するのは、普通の人にとって相当難しいと思う。動物実験の結果が示されている場合は、まず初期段階評価の結果と判断し、人に当てはめるにはさらなる実験が必要なのだと考え、動物実験から得られた結果の情報として条件付で憶えておくのがよいかもしれない。
最後の「柔軟に考えをかえていく」というのは、間違った情報を見破るというだけでなく、普通の生活を行っていくときにも重要なことだと思う。人は固定概念が出来上がってしますとなかなか新しいことを受け付けなくなってしまう。こうならないためにも頭をなるべく柔らかくしておく必要がある。
松永和紀さんの「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書)」は、非常にわかりやすく、ここで引用した以外にも多くの間違った科学情報に対しての問題点を指摘している。例えば、マイナスイオンやトランス脂肪酸、そして遺伝子組み換え食品など。あまりに丁寧に書かれているので引用が長くなるので引用できなかったが、ぜひ、読んでみてほしい本だ。残念ながら、本屋に山積みされている状況ではないが、新書コーナーには必ずあるので、一度探してみてほしい。ベストセラーになってほしい本の一冊だと思う。