電磁力

 ケネス・W・フォード著「【送料無料】不思議な量子 [ ケネス・W.フォード ]」からの引用。

 光子の履歴はおもしろい。アルバート・アインシュタインが「発明」した1905年以降、1920年代の科学者は「粒子もどき」とみていた。だが1930〜40年代、光子はめでたく粒子の仲間入りを果たし、電子・陽電子と結びつけた量子電磁気学という力強い理論が生まれる。それからいまに至まで、私たちは光子を、質量も大きさもない粒子、電磁力を伝える素粒子とみている。
 光子は太陽エネルギーの22億分の1を地球に届け、恒星や惑星、ロウソク、電球、稲妻の輝きを読者の目に運ぶ。何かを読んでいるときは、1秒当たり何十億個もの光子が、文字や絵の情報を目の網膜に伝える。また、ラジオ・テレビの電波、携帯電話の信号、暖かい壁から来る熱、病院のX線など、目に見えない光子もいろいろとある。宇宙には、ビッグバンが残した「背景放射」として低エネルギーの光子が満ち、物質の粒子1個につき約10億個の光子がいる。
 かつて湯川は、交換粒子が重いほど、力の及ぶ範囲はせまいとみた。つまり、ほかのものはいっさい変えず、交換粒子だけをどんどん重くしていくと、力は作用範囲がせまくなるほか、どんどん弱くもなっていく。
 1970年代には、アブウス・サラム、スティーブン・ワインバーグ、シェルドン・グラショウの3名が大胆な着想を出す。弱い力と電磁力は、共通の相互作用が別々に現れたものにすぎない、というアイデアだ。両者のちがいは、力を伝える粒子の差だけにある。電気力は作用範囲が広く(何メートル先にも及ぶ)、その力を伝えるのは質量ゼロの光子だから、相対的に強い。かたや弱い力は作用範囲がせまくて(陽子の直径にも及ばない)相対的に弱いから、巨大な粒子を必要とする。以後あまり時間がたたないうちにW粒子とZ粒子が見つかって、この「電弱」理論を補強した。
 つまり弱い力と電磁力は、ある意味で同じ力だということになる。弱い力はどんな粒子の間にも働き、電磁力は帯電粒子どうしだけに働くため、両者は完全に同じとはいえないけれど。

 光は、電磁力を伝える粒子。質量も大きさもない。しかしエネルギーはもっている。