ビッグバン宇宙論(2)

 谷口義明著「暗黒宇宙の謎―宇宙をあやつる暗黒の正体とは (ブルーバックス)」からの引用。

宇宙年齢38万年の頃
 しかし、宇宙の膨張と共に温度は冷え、プラズマの時代も終わりを告げる。宇宙の温度が3000K程度になると、陽子と電子は再結合し、中性水素原子になる。それまで、電磁波はプラズマによる散乱のため、宇宙を自由に飛び交えなかった。つまり、電磁波による情報は宇宙の中にはなかなか伝わらないということになる。
 しかし、再結合以降はプラズマの散乱がなくなるので、電磁波は宇宙を自由に飛び交えるようになる。電磁波にとってみれば、「宇宙の晴れ上がり」、ということになる。
 この再結合の起こる時刻は、赤方偏移でz=1088。宇宙年齢に換算すると38万年前ということになる。じつは、このときの宇宙の姿を、私たちは見ている。それが宇宙マイクロ波背景放射である。
 ところで、「宇宙の晴れ上がり」という用語はきわめて的を射た表現である。電磁波は、それまで電子散乱のおかげで自由に宇宙を伝搬できなかった。しかし、プラズマの再結合で宇宙はようやく見通しのきく世界になったからである。この用語は佐藤文隆による提案である。しかし、国際的にはこの現象は字義通りに”recombination(再結合:脱結合という用語を使われることもある)”と呼ばれている。陽子と電子がよりを戻したからである。

そして、そのあと
 この宇宙の再結合のあとは、温度も冷えて、少し穏やかな宇宙になる。インフレーションのときに仕組まれていた、わずかな密度の揺らぎが少しずつ重力で成長し、より質量の大きなガスの塊を作っていくようになる。宇宙誕生後、1億年ほど時間が経過するとこれらのガスの塊は太陽の100万倍程度の質量をもつほどに、成長することができる。この中で最初の天体、星ができはじめると考えられている。宇宙で第一世代の星である。
 さらに数億年かけて、ガスの塊は地殻にあるガスの塊と合体を繰り返し、ようやく現時の銀河程度の質量まで成長する。そして、宇宙年齢137億年歳の今、多様な銀河がたくさん存在する宇宙になったのである。

 宇宙の初めの頃、陽子と電子は結合していたのだろうか?水素として存在していたのだろうか。ここで、再結合という言葉を使っていることから考えるとそう考えるのが普通なのだろう。しかし、インフレーションの前の状態にもともと水素が合ったようには思えないのだが・・・。このへんどうなのだろうか?