ビッグバン宇宙論(1)

 谷口義明著「暗黒宇宙の謎―宇宙をあやつる暗黒の正体とは (ブルーバックス)」からの引用。

宇宙の始まり
 宇宙の始まりは「不確実な物理の時代」と呼ばれる宇宙初期の時代である。そこは量子宇宙論の世界である。たとえば、宇宙最初の10-43秒は、重力ですら量子的に取り扱う必要がある。
 現在の宇宙では、ブラックホールなどの非常に強い重力場を持っているものについては、量子的な取扱いが必要になる。しかし、現在の宇宙空間は非常に密度の低い状態になっているので、このことを気にする必要はない。しかし、宇宙最初の10-43秒は宇宙そのものの密度があまりにも高いので、私たちの常識は通用しないということになる。
インフレーション
 その後宇宙は、真空の相転移に伴うエネルギーによって、指数関数的な膨張をする。インフレーションと呼ばれる現象である。佐藤勝彦とグースが1981年に独立に提案したアイデアである。
 相転移という言葉は難しい印象を与える。しかし、私たちの身近でも相転移は日常茶飯事のごとく起こっている。水を冷蔵庫に入れ、しばらくすると水は氷になる。水(液体)から氷(固体)になったのである。液体とか固体という物理状態のことは「相」という単語を使って表す。したがって水から氷への変化はまさに相転移という現象となる。
 水蒸気から水も然りである。水から氷になるとき、水は余分なエネルギーを放出して氷という相に変わる。これと同様に、真空がこの種の相転移を起こすとき、エネルギーの放出がある。このエネルギーがインフレーションのエネルギーとなっているのである。
 インフレーションは宇宙の年齢が10-36秒の頃に起こる。あっという間のできごとだが、インフレーションはエネルギーを熱に変えることで終了する。したがって、インフレーション終了後の宇宙はまさに灼熱の火の玉になっていたことになる。
 宇宙誕生後、最初の3分間は宇宙の温度は非常に高い。そのため、元素の合成が可能になる。この間に、水素、重水素やヘリウム原子核が合成される。リチウムなどの軽元素もわずかだが作られる。宇宙の温度が10億度を下回る頃、この元素合成は終わる。その間がわずか3分間なのである。
 ただしk、元素合成が終わったとはいえ、宇宙の温度はまだ十分高いので、宇宙は完全に電離していたはずである。プラズマの支配する宇宙の時期がしばらく続くことになる。

 今日と明日の二回に分けて、谷口氏が書いているビッグバン宇宙論の説明文書を掲載する予定。インフレーションと背景放射を用いて宇宙の枠組みを書いている章で、最終的はバリオンが総質量密度に対して、たった4%しか寄与していないという事実を述べている。
 今日の引用部分だけでは、インフレーションがなんなのか今一理解に苦しむ。また、真空の相転移とはどういう現象なのかもわからない。
 ただ、宇宙最初の方の3分間で、水素や重水素などの軽い元素が合成されたこと、そして、そのエネルギーを得るにはインフレーションが必要だったことがおぼろげにわかる。