グリセミック指数
岡田正彦著「人はなぜ太るのか―肥満を科学する (岩波新書)」からの引用。
肥満との関係で、もう一つ重要な栄養素がぶどう糖である。いわゆる血糖値は、血液中におけるぶどう糖の濃度をあらわしたものである。
その血糖値の上がり方が、同じ炭水化物でも食品によって異なることがわかってきた。炭水化物を食べた直後から一定の時間内(2〜3時間)に、血糖値がどれくらい上昇するか数値化したものをグリセミック指数という。ぶどう糖のそれを100とした数値で、例えばバナナでは50〜60位の値となる。(中略)
つい最近、シドニー大学のケイ・フォスターパウエルとブランド・ミラーという二人の研究者が、グリセミック指数に関する世界中の文献を丹念に調べ、食品ごとの平均値を算出してくれた。600種類もの食品について調べた貴重なデータなのである。表は、その一部を書き出したものである。表 グリセミック指数(各種報告の平均値)
指数 食材 100 ぶどう糖 90〜99 (棒状の)フランスパン 80〜89 ジェリービーンズ 70〜79 パン(精白小麦粉でつくったもの、ほぼ日本の食パンに相当)、ベーグル(パンの一種)、コーンフレーク(ケロック社)、マッシュポテト、にんじん、かぼちゃ、ドーナッツ 60〜69 パン(全粒小麦粉)、クロワッサン、パイナップル、アイスクリーム、砂糖、ファンタ(コカコーラ社) 50〜59 炊いたご飯、オートミール、ゆでたポテト、とうもろこし、ポテトチップス、ポップコーン、バナナ、キウイ 40〜49 ぶどう、オレンジ、チョコレート、アップルジュース、グレープフルーツジュース 30〜39 ゆでスパゲッティ、ヨーグルト、リンゴ、梨 20〜29 ソーセージ、牛乳、グレープフルーツ 10〜19 ピーナッツ
このグリセミック指数という数値は、この本を読んで初めて知った。ボストンのチルドレン・ホスピタルで行われた実験で、
- グリセミック指数が小さい食事
- グリセミック指数が中くらいの食事
- グリセミック指数が大きい食事
の三種類を用意し、太り気味の若者何人かに食べてもらい、グリセミック指数と肥満との関係を調べたものがある。それによると、
- 食事の分量とカロリーが同じでも、グリセミック指数が大きい食事では、すぐに空腹になってしまい、間食を食べずにいられなかった(間食を含めるとカロリーオーバーになってしまう)。
- 血液検査の結果から、グリセミック指数の大きい食事ほど、インシュリンの分泌量が格段に多くなっていた。
- アドレナリンと成長ホルモンの二つが、「グリセミック指数が大きい食事」で上昇した(どちらも肥満を助長するホルモン)。
- グルカゴンというホルモンが「グリセミック指数の小さい食事」で格段に増加していた(グルカゴンは血糖値が低くなると分泌されるホルモンで、体内にたまった中性脂肪を分解する働きがある)。
等がわかった。これをまとめると、
「グリセミック指数の大きい食事ほど太りやすく、かつ糖尿病になりやすい」
ということらしい。
パンとご飯を比較すると10から20以上パンの方がグリセミック指数が高い。従って、パンの方が食べた後、血糖値が上がりやすく、早く空腹感を感じてしまう可能性がある。また、パンには水分が含まれていないこと、ご飯の半分ぐらいは水分であることを考慮すると、パンの方がグラム当たりのカロリーが高い。そのため、パン食の方がより太りやすくなる。
ただ、グリセミック指数が低いものでも、油脂分が多いもの、例えば揚げたものなどは、カロリーが高そうだから気をつけた方が良いかもしれない。