パネルディスカッションで発表した内容について

 原告側の尋問では、環境ホルモンシンポジウムで原告が発表した内容について、延々とその補足が行われました。事前に原告側が用意していたシンポジウム当日に発表したレジメ(実際に発表に使用したものに、要点を加えられたもの)を傍聴席にも配布し、説明を行っていました。恐らく、原告側尋問の四分の三ぐらいは、この説明にあてられていたと思います。
 シンポジウムでの発表時間は15分だったそうですから、その3倍の時間をかけて発表内容を説明したことになります。逆にいうと、シンポジウム当日、原告が伝えたいと思ったことは、時間の制約上、まったく伝わらなかったのではないかと感じました。
 原告本人は、レジメを示せば、科学者は即座に内容を把握できると主張して、「内容が伝わらなかったのではないか」という被告側の疑問に反論していました。しかし、発表内容は、原告の研究をある程度理解している人でなければ、内容を把握することは難しい内容で、かつ、はなしの所々で急に展開が変わるので、科学者でも専門外の人にとって理解しがたい内容であることは変わりないと感じました。
 特に、問題となっている京都新聞の記事を突然示した部分は、唐突で、普通の人は、なぜ、そこに結びついていくのか理解に苦しむ内容です。原告は、その前のレジメで、ダイオキシンは解毒機構が効かないため、毒性を示すことを説明し、そのながれで、ナノ粒子を出したと主張していました。そして、有名なフレーズ、「次のチャレンジはナノです」につながっていきます。しかし、シンポジウムでは、なぜナノなのかは説明されていません。その部分の補足が行われることを期待したのですが、ただ関連がある、普通だったらその関連を理解できると主張するだけで、一般の人が思う疑問に対して原告が十分に説明できたとは思えない説明でした。