右利きと左利き

 酒井邦嘉著「言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)」からの引用。

 右利きの人の約96%は、言語機能が左脳に局在している。従って、右利きの人で失語症が起こるのは、左脳に損傷を受けた場合がほとんどである。このように、特定の機能が左右の脳のどちらかに偏っていることを、「大脳半球優位性(機能的一側性)」と言う。右利きの人の残りの約4%は、右脳が言語の優位半球であり、右脳の損傷が原因で失語症になるので、「交差性失語症」と呼ばれる。
 左利きの人は全人口の約7%いる。右手は左脳が、左手は右脳が支配しているので、左利きということは、右脳が少なくとも手の運動に関する限り、優位半球なのである。利き手と言語が関係しているかどうかはわかっていないが、左利きの人で左脳が言語の優位半球なのは、70%にすぎない。残り30%のうち、約半分は右脳が言語の優位半球で、残りの半分は言語に半球優位性がないという。

 以前、スティーブン・ピンカー著「言語を生みだす本能〈下〉」からの引用で、同様の内容を書いた(左利きと言語回路)。左利きの人の場合、左脳が言語の優位半球になっている人が70%という割合は、ピンカーが書いているのと同じである。半球優位性は、ここの機能で異なっており、右利きだから、全ての機能が左脳でコントロールされているわけではないらしい。
 自分に当てはめてみると、手は左利きだが、足は右利きである。手が左利きということだけで、左利きの人はとよく言われるが、実際はそれぞれの機能で左利きと右利きが違っていたりする。言語に対する半球優位性で区別した方がよっぽど正確なのではないだろうか。
 それにしても、手が左利きである場合、生活する上で不利なことが多い。電車の自動改札機や自動販売機など全てが右利き用に設計されている。まあ、全人口の約7%しかいないのであれば仕方がないが、それにしても不便である。