中長期的なエネルギー安全保障の確立に向けて

 上記表題の対談が資源エネルギー庁のホームページで見られる。「新・国家エネルギー戦略」についての座談会なのだが、原子力発電に関して、非常に予想が甘い感じがした。対談を行っている有識者3人とも、原子力発電推進派のようで、もっと比率を高めるべきとの主張をしている。しかし、ウランという鉱物資源も有限であり、その多くは、アメリカ、カナダといって一部の国に偏って埋蔵されている。アメリカや中国が本格的に原子力発電を行い出すと、ウラン枯渇へのスピードは一気に高まる。当然、ウランの価格も高騰するだろうし、もともとウランを持たない日本は不利になると思う。技術力を提供し、ウラン獲得といったシナリオが描かれているが、ウランが貴重になればなれほど産出国であるアメリカや中国はウランを出してこないだろう。したがって、原子力発電の比率を高めるべきかどうかは、世界情勢を考慮して、冷静に判断してもらいたい。
 バイオマスエタノールやGTL(ガス液化燃料)に関しては、業界団体が渋る可能性を示唆している。バイオマスエタノールは、ガソリンスタンドなどのインフラ整備に膨大な費用がかかることが理由。また、GTLは、自動車をディーゼル対応に変更していかなければならないため、自動車業界が渋っているという。この部分は、やはり国の政策をハッキリ示すべきだろう。民間主体だとスピードが鈍る可能性がある。両者のエネルギーにも問題がたくさんある。天然ガスからつくるGTLの場合、天然ガス自体がそれほど多く埋蔵されているわけではない。また、バイオマスエタノールもまだまだ発展途上のエネルギー技術だ。
 現時点では、石油に頼っている比率を下げるために、どれかの方法に偏るのではなく、それぞれの方法をバランスよく利用していくのがベストではないだろうか。
 それにしても、この座談会に参加している有識者は鉱物視点やエネルギー資源がどういう比率で存在していて、どのくらい残っているのかをほんとうに把握しているのだろうか。楽観主義すぎるのではと思ってしまう。