WHOの方向転換

読売新聞の新聞記事。WHOがDDTの使用を推進するというもの。

マラリア制圧へ「DDT」使用拡大訴え…世界保健機関
 【ワシントン=増満浩志】世界保健機関(WHO)は15日、ワシントンで記者会見を開き、「マラリア制圧のため、DDTの屋内噴霧を進めるべきだ」と発表した。
 DDTは、生態系に深刻な悪影響を及ぼすとして1980年代に各国で使用が禁止された殺虫剤だが、WHOは「適切に使用すれば人間にも野生動物にも有害でないことが明らかになっている」と強調、DDTの“復権”に力を入れる方針を示した。
 マラリアの病原体は、熱帯の蚊によって媒介される。DDTの散布によって激減に成功した国もあったが、その使用禁止とともに再び増加。最近は世界で毎年、5億人以上がマラリアに感染し、100万人以上が死亡しているという。
 WHOマラリア対策本部長の古知新(こち・あらた)博士は「科学的データに基づいた対策が必要だ。安全な屋内噴霧剤としてWHOが認めた薬剤の中で、最も効果的なのがDDTだ」と説明した。
 WHOによると、10か国でDDTの屋内残留噴霧が行われている。


(2006年9月16日12時56分 読売新聞)

 マラリアで苦しんでいる人は毎年5億人もいる。毎日100万人以上の人が亡くなっている。その多くは、アフリカの貧しい国々の子どもや妊娠した母親たちである。
 「沈黙の春」で農薬が与える環境への影響がクローズアップされ、その時取り上げられたのがDDTだ。この30年間、各国でDDTの使用が禁止されてきた。
 しかし、DDTは、マラリアを発生させる蚊の繁殖を抑えるのに最も有効な殺虫剤であることは認められていて、DDTのリスクとベネフィットをどう判断するかが課題となっていた。
 昨年LancetがDDTのリストとベネフィットを解析した報告を発表し、DDTは、適性に使用されれば、言われているような発ガン性や体内蓄積性はほぼないことがわかった。
 上記のような状態であることを考えると、DDTの使用は、マラリア撲滅に必須の殺虫剤だとWHOは述べている。
 「沈黙の春」が発表された頃は、リスクを評価するシステムが確立されていなかった。環境問題を定義したことは、「沈黙の春」の功績だが、その内容を吟味もせずに、全て信じてしまうことは間違いなのだろう。毎日新聞は、レイチェル・カーソン生誕100周年という記事で、レイチェル・カーソンの実績を照会しているが、時を同じくして、WHOは、レイチェル・カーソンと決別した。