市民はなぜリスクを理解できないのか

 安井至先生のホームページ「市民のための環境学ガイド」で有害物質に関してのコラムが掲載されている。その中で、「環境フォーラム」で使ったPPTファイルがあり、その真ん中当たりに「市民はなぜリスクが理解できないか」の理由が記されてある。
 理由は5つ挙げられている。

  1. 知らない=単純な思いこみ
  2. 原理原則を知らない
  3. 自分の体は繊細
  4. ヒトの死なない社会
  5. 思い上がり

1.知らない=思いこみ
 ミネラルウォーターの基準は、水道水よりも5倍緩いことや、割り箸には防腐剤や防カビ剤が使用されていて、もともと洗われていないことなどをあげ、いかに思いこみだけで判断しているかを指摘している。
2.原則原理を知らない
 ビタミンやミネラルを過剰摂取すると毒となること、物質が毒かどうかは量できまること、生物は毒を摂取することを踏まえて防御システムを備えていることなどがあげられている。
3.自分の体は繊細
 ヒトは最高性能の防御システムを備えていること、それ故蔓延していることが述べられている。
4.ヒトの死なない社会
 WHOの日常的なリスクによる損失余命比較をして、いかに日本が安全でリスクが少ないかを示している。
5.思い上がり
 最後の最後に登場したホモサピエンスのために「専用の贈り物」を用意するほど、地球は優しい天体ではないと言い切っている。



 おそらく、市民団体などの幹部の方々は、それぞれに対して反論をするだろう。とくに、人間は地球という環境の一部だと考えている方や天然物質は人間にとって害になるわけがない、自然は人間に対してやさしいはずだと思っている方たちにとっては、絶対信じられないことだろう。
 そして、これらの人々は、科学的な判断を重要視しない。いや、無視する傾向がある。ここでいう科学的な判断とは、科学者の間で議論がなされ、現時点ではこう判断するのがベストだと認識されている判断である。そして、自分たちの主張に近い科学的データもどき(その再現性などが確かめられていないものなど)をあからさまに支持して主張の裏付けにしようとしたりする。
 しかし、ほとんどの一般市民は、こうゆう主張ではない。ただ単に情報が不足している、知識が不足している、そして、情報が偏っているだけだ。
 国は、市民団体を通じて情報公開を行っていくつもりだったのだろうが、それよりもインターネットなどで直接国民に情報を伝える、アピールしていく。また、都道府県や市町村の環境部門を活用して口コミで正しい情報を伝えていくといった方法を地道に行う方が確実性もあるし、早道かも知れない。環境省など一部の省庁ではそれに気づきはじめている。