原子核物理学の重要な成果

 サイモン・シン著「ビッグバン宇宙論 (上)」からの引用。

 本章で天文学や宇宙論の用語が出てこなくなってからずいぶん経つが、原子と原子核の物理学の大躍進を紹介しておくことは非常に重要なのである。というのもこの進展が、ビッグバン・モデルの検証にあたって決定的な役割を果たすことになるからだ。中心に原子核をもつラザフォードの原子モデルと、このモデルにもとづく原子核反応(核分裂と核融合)の知識が、天を調べる新しい方法のための舞台を整えたのである。本書の主たるテーマに戻る前に、原子核物理学の重要な成果をまとめておこう。

  1. 原子は、電子、陽子、中性子からできている。
  2. 陽子と中性子は原子の中心、すなわち原子核を占めている。
  3. 電子は原子核のまわりを軌道運動している。
  4. 大きな原子核は不安定なことが多く、核分裂は起こしうる。
  5. 核分裂や核融合の結果として生じた原子核は、もとの原子核よりも軽い。
  6. E=mc^2 により、この質量の減少分から、エネルギーが放出される。
  7. 中ぐらいの重さの原子核はもっとも安定で、めったに核反応を起こさない。
  8. 非常に軽い原子核や、非常に重い原子核でも、核融合や核分裂を起こすためには、高いエネルギーと大きな圧力が必要になることがある。

 これらの成果は、確かにビッグバン・モデルの検証に決定的な役割を果たすことになる。そして、後数十年間後に石油の枯渇(全くなくなるわけではなくて、経済的に価値を失うほど、掘削にお金がかかるようになる)を迎えようとしている現在においても、大きな役割を果たすのではないかと考えている。エネルギーをどこから得るのかは、非常に難しい問題で、安易に宇宙から取り入れればよいという問題ではないと思う。太陽から注がれるエネルギーは、確かに豊富にあるがこれをエネルギーとして有効に活用するには、ブレークスルーが必要だと思う。現在の太陽電池のように、地球にとっても、宇宙にとっても貴重な資源を使用して、光を電気に変換する方法だとそんなに長く活用することは難しいと思う。燃料電池にしても同様で、太陽電池よりもされに貴重な資源を使用している。パフォーマンスとしてはいいが、現実性という観点から見ると、今のままでは実用化は難しいと思う。
 当面は、原子力発電に頼らざるおえないと思うが、ウランにしても、限られた資源であることに変わりがない。
 必要とするブレークスルーは、もしかすると原子核物理の世界にあるのかもしれない。われわれは、どの原子も同じ陽子と中性子と電子でできており、それらの数が違うことで原子の種類が異なっていることを知っている。しかし、これを活用できるまでにはまだ至っていないのが現状だと思う。