宇宙の元素存在比

 サイモン・シン著「ビッグバン宇宙論 (上)」からの引用。

 ビッグバン・モデルが受け入れられるためには、無視するわけにはいかないひとつの問題があった。一見すると何の害もなさそうなその問題は、「豊富な物質もあれば、まれにしか存在しない物質もあるのはなぜか?」というものだった。地球という惑星を見れば、中心部の核は鉄でできており、地殻は主として酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄でできている。海はほぼ水素と酸素(つまり水)からなり、大気の主成分は窒素と酸素だ。しかしもう少し遠くまで踏み出してみれば、このような物質分布は、宇宙スケールではおよそ典型的ではないことがわかる。天文学者たちは分光学を使って星の光を調べることにより、宇宙に断然豊富に存在するのは水素であること知った。
(中略)
 宇宙で次にたくさん存在する元素はヘリウムで、水素とヘリウムを合わせれば宇宙の元素の大部分を占めることになる。水素とヘリウムは、小さくて軽いほうから二つの元素であるため、天文学者たちは、うちゅうは大きくて重い元素ではなく、小さくて軽い元素で占められているという事実に直面することになった。次の表を見れば、この偏りがどれほど極端かがわかるだろう。この表では、宇宙に存在する元素の量を、炭素を1とする重量比(存在比)で表した。ここに挙げた値は現在の測定結果によるものだが、1930年代の推定値からそれほど違っていない。
  元素       存在比
  水素      10000
  ヘリウム     1000
  酸素          2
  炭素          1
  その他         1未満
 この表からわかるように、水素とヘリウムを合わせれば、宇宙に存在する全元素のざっと99.9パーセントを占めることになるのである。軽い方から二つの元素はきわめて豊富に存在し、それに続く軽い元素や中ぐらいの重さの元素はそれほど多くなく、金や白金のような重い元素ともなれば滅多に存在しない。

 正直言って、宇宙スケールでの元素存在比は知らなかった。地球レベルで見れば、鉄やケイ素、そしてアルミニウムは豊富に見えるが、宇宙スケールでみると非常に貴重な存在だと言える。そして、後日記載するが、水素とヘリウム以外の元素は、星の寿命が来て、星が爆発し、再度新しい星が形成される過程でないと作れないらしい。鉄やケイ素やアルミニウムなど金属類は、宇宙を探索してもまれにしか見つからず、再度軽い元素から合成されるには星の再形成がおこなわれなければ得ることはできない。このことは、十分理解していなければならないことだろう。
 有機物にしても、同じことがいえるだろう。私たちを含めた有機物にとって、地球循環システムが非常に大事なのは、いうまでもない。