国際的な合意は、議会のコントロールが効いているわけでない

 白田秀彰著「インターネットの法と慣習 かなり奇妙な法学入門 [ソフトバンク新書]」からの引用。

 議会において政策Aと政策Bが対立している。しかも、それは法律レベルではなく憲法レベルの対立を含んでいるとする。政策Aにも政策Bにも法的・憲法的な根拠がある。これを議会でまともに議論していては、とてもとても時間がかかる。もしかすると、政策Aの実行には憲法の改正まで必要かもしれない。そうするともっともっと時間がかかる。でも、少なくとも政策Aには大義名分があって、議会においてもかなりの賛成派がいる。政府も政策Aを推進したいとなると、一番早く合意形成してしまう方法は、国際的な舞台に議論の場を移してしまい、政策Aを国際合意とすること。しかも、条約にしてしまえば、憲法を越えるか、あるいは並び立つ権威を持つことができる。日本の場合、憲法改正にはとてもとてもメンドウくさい手続きが必要だが、条約の締結は行政権だけで進めてしまえる。議会で批准されなくても、もう政策Aの方向にしか進めないことになる。あとはじっくり議会を説得すればいい。

 国際合意というと、何も考えずに守らなければいけないことと思ってしまいがちだ。しかし、言われてみれば、確かに議会を通さずに政策決定できる方法だ。北朝鮮に対する対応も国際合意のもとに進めていくといった方法がとられている。つまり、議会で十分議論されないうちに政策が決まっていることになる。議会は国民の代表であるから、国民の同意を得ないで、政策が実行されているということになる。
 この部分を十分理解した上で、国際合意に基づく対応を見ていかなければならないのだろう。特に、政策の実現を望んでいる政府の背後にいる権威者がどういう団体もしくは企業、そして人なのかを冷静に把握しておく必要があるだろう。
 インターネットに関しての法律改正などが行われるときは、特に注意が必要だと思う。すでに確立している権威を維持するために、国際合意が使われる可能性は高いと思う。一昨日引用したとおり、アメリカではP2P海賊行為防止法案のように、権力を守る側が提案しているものがある。日本でもいつ国際合意にもとづいて同じような政策が実行されてしまうかわからない。