携帯電話:電磁波の影響

読売新聞の記事。「金属の天井や壁のある空間では、携帯電話などの発する電磁波が反射するため、発信源から距離をとっても、必ずしも弱まらない」という内容。

携帯の電磁波、優先席離れても影響変わらず…東北大


 「電車内での携帯電話の電源オフは、優先席付近だけでいいの?」。東北大理学研究科の本堂毅助手(統計物理学)らの実験で、金属の天井や壁のある空間では、携帯電話などの発する電磁波が反射するため、発信源から距離をとっても、必ずしも弱まらないという結果が出た。
 25日から電子版で公開される日本物理学会の英文誌に発表される。
 一般に、電磁波は、発信源から離れるほど弱まる。心臓ペースメーカーに影響を与えない携帯電話との安全な距離を、総務省の指針は「22センチ以上」としている。このため、鉄道各社は、心臓ペースメーカーの誤作動などを防ぐため、優先席付近の携帯電話の電源オフを呼びかけている。しかし、本堂さんは「指針は、金属の壁や天井で電磁波が反射する電車内の環境を想定していない」として、電車内に類似した金属製のコンテナ内で、無線機から電磁波を発生させ、距離を変えながら、その強さを測定した。
 その結果、無線機から4・6メートルの地点で、反射がない場合の1800倍の電磁波強度が測定された。この強度は、反射がない状態では、11センチで感知する強さに相当するという。また、ドアを開けたエレベーター内の実験でも、発信源から2・6メートルの地点で、反射がない場合の10センチ相当の強度だった。
 これらは、電磁波が極端に高くなる地点の数字だが、反射した電磁波が集まるかどうかで、直線距離とは無関係に、電磁波強度が変動することがわかった。
 総務省電波環境課は「窓がある電車内ではそれほど強まらないという別の実験結果もあり、参考にしたい。エレベーターについては、詳細な検討を計画している」と話している。


(2006年7月25日3時7分 読売新聞)

 携帯電話の電磁波が心臓ペースメーカーなどにどの程度影響を与えているかは、平成7年から8年にかけて詳細実験が行われ、平成9年3月に「医用電気機器への電波の影響を防止するための携帯電話端末等の使用等
に関する指針」というガイドラインが決められて、現在まで運用されている。携帯電話も、そして心臓ペースメーカーもガイドライン後も電磁波による影響を弱める開発が行われていて、 平成14年3月の報告書には、かなり改善されていることが報告されている。実際に、携帯電話が出す電磁波も小さくなっているし、ペースメーカーの誤動作も減っているようだ。ガイドライン自体が変わっていないのは、まだ、平成13年度以前の機種が使われているためである。
 この記事に記載されているように、この調査では、金属部分での反射により電磁波が弱まらないことは考慮されていない。従って、この部分は検証する必要があるのかもしれない。ただ、新聞記事の実験では、本物の携帯電話は使われていない。推測だが、これは、携帯電話から出る電磁波が弱かったため、実験にならなかったのではないだろうか。
 物理現象としては、事実を伝えているのだろうが、これが、実際の携帯電話に当てはまり、ペースメーカーなどが誤操作するとは、思えないのだが・・・。ハザードだけを取り上げるのではなく、どのくらい電磁波でペースメーカーに影響があるのかといったリスクや、病院などで入院患者さんがインターネットを見られる環境が実現するなどのベネフィットも同時に取り上げて記事にしてほしい。ちなみに、人間も電磁波を出している。