左ききと言語回路

 スティーブン・ピンカー著「言語を生みだす本能〈下〉 (NHKブックス)」からの引用。

 歴史上のあらゆる時代、あらゆる社会において、人間の90%が右ききである。また、人間の大半は、右手(左脳)を優先させる優性遺伝子のコピーを一つ、または二つ持っていると考えられている。同じ遺伝子の劣性版コピーを二つ持つ人は、右手優先の傾向がさほど強くない。彼らは右きき、左きき、両手遣いに分かれていく。

 ピンカーは、引用以外の部分で、人間の場合、手や足など体の対象部分を制御する回路は、180度回転しており、右手を左脳が制御し、左手を右脳が制御していると述べている。ところが、言語を制御する回路は、対称性を考慮する必要がないので、通常脳の左半球、つまり左脳に偏っているらしい。ピンカーはここまでの説明のなかで何度かそのことを指摘してきた。
 右ききの人は左脳で考え、左ききの人は右脳で考えるとよく言われているが、この部分はどうなっているのだろうか。

 言語に関するかぎり、左ききの人の大半は、右ききの人の鏡像ではない。右ききの人のほぼすべて(97%)は脳の左半球が言語を制御しているが、左ききの人のうち、右脳が言語を制御している割合は19%前後にすぎない。残りの左ききの人は、左脳で制御している(68%)か、両方でだぶって制御している。ただし、おもに左脳で制御する場合も含めて、左ききの人のほうが、右ききより、片方の脳への集中度が低い。したがって、左ききの人のほうが、片方の半球で卒中がおきたときも、失語症になりにくい。左ききの人は、数学、空間、芸術にかかわる活動に右ききより優れるが、言語障害、読書障害、吃音症になりやすい、という説もある。また、左ききの肉親を持つ右きき(右手優先の優性遺伝子のコピーを一つしか持たないと考えられている)は、純粋な右ききと文解剖の仕方が微妙に違うようだ。

 右ききの人のほとんどが、左脳で言語を制御しているのに対して、左ききの人は、右脳で制御している割合は、19%前後に過ぎないらしい。68%の左ききの人は左脳で制御し、残りの13%は、右脳と左脳両方で制御しているといっている。ただ、右ききに比べ、左ききの人は左脳への集中度が低いといっている。これは、言語の場合の話ではなく、すべての制御で左脳に集中することが少ないと言う意味なのであろうか。それとも、言語制御に関してなのだろうか。ここの部分の説明がないので、いまいち理解に苦しむ。
 左ききの人は、片方の半球で卒中がおきたとしても、失語症になりにくいといっている。無菌性髄膜炎になったとき、医者に後遺症が残る可能性が高いと言われた。しかし、右手のしびれ以外に目立った傷害は、失語症を含め出なかった。何となく一部の記憶がなくなっているような気もするが、この部分は思え出せないので自分で判断しようがない。後遺症が出なかったのは、自分が左ききだったからなのであろうか。