7月7日付けで、環境省から7月4〜5日に行われた中国、韓国、モンゴル、そして日本が参加した非公式対話のポイントが記載されている。
 テーマは、

 2013年以降の気候変動枠組みのあり方に関して、開発・エネルギー安全保障、技術開発・移転、クリーン開発メカニズム(CDM)、適応の4つのテーマについて、政策担当者や専門家間で活発な意見交換が行われた。本非公式対話の議題は以下のとおり。

セッション1:  2013年以降の気候変動枠組みへの視座
セッション2:  開発・エネルギー安全保障
セッション3:  技術開発・移転
セッション4:  クリーン開発メカニズム(CDM)
セッション5:  適応

本非公式対話の主要なポイントは以下のとおり。

[1] エネルギー安全保障・開発と気候政策:

  • エネルギー問題は、途上国の経済発展にとって最重要課題であるが、これまでの気候政策議論においては、エネルギーの安定供給やエネルギーアクセスの課題に、必ずしも適切な注意が払われてきていない。エネルギー問題と気候変動問題に同時に対処する新たな枠組み、もしくは仕組みを検討することが必要である。
  • しかし、気候変動問題がグローバルな問題として議論されている一方、開発・エネルギー安全保障問題は、各国の国内政策と密接に関連している。こうした各国の開発やエネルギー安全保障問題と気候変動問題を統合するためには、各国の実情に応じた政策(ボトムアップ型)と、温室効果ガス(GHG)濃度の国際的安定化を図る政策(トップダウン型)の統合を検討する必要がある。
  • 中国では、エネルギー効率向上の潜在能力は高い。第11次5カ年計画においても大幅なエネルギー効率改善を目標としている。しかし、エネルギーに関する国内目標を直ちに気候変動枠組みにおける達成目標とすることは難しいとの発言があった。
  • GHG排出削減政策が、地方レベルでの大気汚染改善や雇用促進といった便益(「共益」)につながる点に注目していく必要がある。

[2] 技術開発・移転

  • 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の究極目的を達成するためには、更なる技術開発が不可欠。また、こうした技術開発、途上国に対する技術移転とともに、途上国国内での技術普及を促進する必要がある。ただし、途上国において新技術を運営維持管理していくための能力を併せて育成していく必要がある。
  • クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)における官民パートナーシップは、民間セクターの気候変動対応への積極的な参加を促進する取り組みとして注目されるが、民間企業がそうした取り組みへの参加する意義を見出しうるよう、具体的な取り組みの進展を早期に示すことが必要。
  • 新技術に対する知的所有権のあり方については、国際公共財としての性格を有する「気候にやさしい技術」に関する知的所有権の保護の条件を緩和すべきとの指摘があった。一方、こうした知的所有権の利用促進については、世界貿易機関(WTO)における強制実施許諾(Compulsory Licensing)や共有特許などによる対応の可能性が議論された。強制実施許諾のAIDS治療薬への適用と同様に、気候にやさしい技術が同ルールに適合できるのかといった点に関し、更なる研究が必要であるとの指摘がなされた。
  • 途上国への技術移転を先進国の数値目標として課す方法については、数量化といった技術的な問題が指摘された。

[3] CDM

  • 参加者からは、CDMでは比較的利益が高いプロジェクトの実施が先行し、必ずしも貧困削減を目指す途上国の持続可能な開発には貢献していないとの意見が出された。
  • CDMを通じた技術移転は必ずしも期待通りには行われていないため、移転の促進を図る改善が必要である。特に、運営維持管理ノウハウの移転が重要。
  • セクターアプローチに関する可能性が議論され、ベースライン設定や追加性など技術的な困難が指摘された。
  • CDM事業を実施するには資金調達が重要だが、現行のCDMは必ずしも投資家にとって魅力的ではなく、貧困削減が優先課題である最貧国でのCDMプロジェクトは限られている。持続可能な開発を支援するODAを活用したCDM実施も検討すべき。また、認証排出削減量(CERs)価格がCDM事業の実施可能性に影響するため、政府による買取や市場における価格の安定を求める意見があった。
  • 途上国からはCDM制度の存続に強い期待が寄せられた。

[4] 気候変動への適応

  • 適応議定書といったような気候変動への適応のみに着目した取組の必要性については、賛否両論が示された。適応をめぐる国際交渉・取組の遅れから、独立した取組を目指すべきとの意見があった一方、適応のみに着目した取組は、GHG排出量削減努力を疎かにする可能性があるといった見方や、適応には巨額の資金が必要とされるが、適応議定書といったような限定した取組では、必要な資金が調達できないのではないかとの懸念が示された。
  • 日本は、これまでもODAを通じて適応に貢献するインフラ整備を支援してきているが、適応策に対するODAによるさらなる支援の可能性が議論された。
  • 適応については、何らかの目標を定めるよりも柔軟な協力体制を構築することが有効であると意見が出された。
  • 緩和対策と同様、適応プロジェクト促進のための市場メカニズム活用については、慎重な立場が多く示された一方で、さらなる検討の必要性も指摘された。

[5] 総括

  • 京都議定書やAPP等の下での現行の取組を踏まえ、情勢の変化に的確に対応できるように、UNFCCCの下での国際協力をさらに深化させてゆく必要性がある。その際、開発・エネルギー安全保障、技術開発・移転、CDM、適応といった課題については、本対話で示された意見・課題を詳細に検討し、アジア各国の懸念として将来枠組みに反映させていく努力が重要である。

 こういう非公式対話の内容も公開されるようになった。とてもいいことだと思う。

 気候変動問題がグローバルな問題として議論されている一方、開発・エネルギー安全保障問題は、各国の国内政策と密接に関連している。

 この問題はどこの国でも同じだろう。特に、開発・エネルギー安全保障問題に関して、各国の利害を調整することはかなり難しいと思う。中国とインドを含めたアジア圏内での大枠的な政策が必要になってくるのではないだろうか。

 新技術に対する知的所有権のあり方については、国際公共財としての性格を有する「気候にやさしい技術」に関する知的所有権の保護の条件を緩和すべきとの指摘があった。

 ここも、重要な事項だと思う。知的所有権の保護は、新技術普及の足かせになるのは、目に見えている。これに関しても、アジア圏内の大枠的なルールが必要だと思う。