エネルギーの扱い方

 海洋温度差発電の発明者である元佐賀大学学長の上原春男氏の書いた「抜く技術」からの引用。豊臣から徳川への移行期に佐賀鍋島氏に仕えた成富兵庫が考え出した水害防止と水利を兼ねた導水技術「石井樋(いしいび)」というのがある。これは、水害に対して逆転の発想で堤防の強度をむしろ弱める方法をとった。つまり水を完全にせき止めようとするのではなく、堤防の一部に水を逃すための「抜き穴」をこしらえたのだ。その抜き穴から流出した水は水路によって安全な場所へと導かれる。導水路を幾重にもつくって、つぎつぎに水を流してやると、水は支流へと分けられるたびにパワーが衰え、最終的に田んぼへ流れ込む。そういう仕組みを成富はこしらえたのである。
 こうした昔の発想から、エネルギーを扱う方法は下記のようにまとめられると著者はいう。

  1. ものの強度はアローアンスがあったほうが高まる。すなわち安全、丈夫なものには抜きがある。
  2. 許容範囲を超えるエネルギーを力で押し返そうとするのではなく、そのエネルギーを逃す(かわす)工夫をする。
  3. 逃したエネルギーはそのままにせず、有効再利用するための知恵を働かせる。

 海洋温度差発電システムには、これらの考え方がちりばめられていると著者はいっている。海のように広く分散してしまったエネルギーを如何に効率良く使用するかがポイントだったのだろう。少なくとも政府の新エネルギーにはリストアップされていない。ただ、この海洋温度差発電システムに関してまだあまり理解できていない。実際このシステムが本当に効率的なのか、もう少し調べてみる必要がある気がしている。