有機窒素過多解消を目指して欲しい

 家畜肥料に関する二つのニュース。一つめは、中央農業総合研究センターが開発した稲を発行させた肥料の話。そして、もう一つは、トヨタが開発して肥料作成期間を短縮できる技術。

牛肉:発酵の稲飼料に抗酸化作用、「赤」長持ち−−茨城・つくばの研究センター
 稲を発酵させた飼料で肉用牛を育てると、抗酸化作用を持つビタミンE濃度が高く、肉の赤色が長く維持できることが、中央農業総合研究センター(茨城県つくば市)などの研究で分かった。鮮やかな赤色を保てるため、小売店の店頭販売での効果が期待される。
 現在、コメは生産過剰で約100万ヘクタールの水田で転作が実施されている。一方、肉用牛の飼料自給率は25%と低い。同研究センターと畜産草地研究所(同)は04年度から、水田機能の維持と飼料自給率の向上を目指して、研究してきた。
 褐毛和種の雌牛に、ただの稲ワラと、コメが熟す前に刈り取り発酵させた稲を与えて肥育状況を比べた。その結果、発酵飼料の牛は肉付きが良いうえ、肉に含まれるビタミンE濃度が約2倍高かった。このため、抗酸化作用により脂肪の酸化が抑制され、肉の赤色を長く維持できたという。
 また、繁殖についても、黒毛和種の雌牛で、干し草と発酵飼料を与えて比較したところ、同じように1年に1回のお産ができ、問題はなかったという。今後は、うまさの決め手となる脂肪交雑(霜降り)への影響を調査する。【石塚孝志】
毎日新聞 2006年6月18日 東京朝刊

 日本の畜産業は、家畜飼料をほとんど輸入でまかなっているいるのが実情。輸入された飼料由来の窒素は、家畜の排せつ物として、日本国内に留まってしまっている。したがって、極端な見方をすれば、牛肉や牛乳などの乳製品は国産よりも輸入品を使用した方が良いという考え方になってしまう。実際、家畜排せつ物を管理する法律が去年から施行されており、深刻な有機窒素過多問題(河川への有機窒素の流出や井戸水中の有機窒素過多など)が起きていることを裏付けられている。その意味で飼料の国産化は、日本の畜産業界にとっては必須になっている。
 そんな意味で、中央農業総合研究センターにはがんばってほしい。

排せつ物:たい肥化、大幅短縮 トヨタなどが新技術、来月から飼育農家に販売
トヨタ自動車は16日、コンタクトレンズメーカーのメニコン豊田通商と共同で家畜の排せつ物を短期間でたい肥化できるシステムを開発したと発表した。7月から牛の飼育農家向けに材料と技術を販売する。トヨタは環境対策の一環でバイオ関連の研究開発を手がけており、今回の事業もメタンなど温室効果ガスの削減や廃棄物の再資源化に役立てたい考え。
 メニコンがレンズの濁り止めなどで培った発酵技術にトヨタが着目。たい肥化促進材と高温菌を共同開発した。牛ふんと混ぜ水分や送風量などを調整することで、通常は90〜180日間かかるたい肥化期間を約45日に短縮、ほぼ無臭に処理できるという。処理後のたい肥は、畜舎内の敷材のほか野菜農家への販売など有効活用できる。
 促進材や技術指導のセットで、価格は牛50頭を飼う農家の場合で年間265万円程度。今年度は九州など地域限定だが、08年度から全国展開して豚や鶏にも用途を広げる。【小川直樹】
毎日新聞 2006年6月17日 東京朝刊

 トヨタは、バイオマス由来の植物から製造する樹脂を開発している。これらの肥料をバイオマス由来樹脂生産に使用していくのかなと思っている。家畜農家に販売していくということのようだが、肥料を製造した後も、是非フォローしてもらいたい。製造した肥料を国内農家に販売してしまうと有機窒素過多問題は解決しない。理想は、飼料を輸入した国に肥料として輸出するのがベスト。
 そこまで、いかなくとも海外に輸出できるシステムを確立してもらいたい。トヨタだけでなく、バイオマス由来の樹脂などを製造するメーカーには、是非この辺のフォローをしてほしい。
 少なくとも畜産業が国内産飼料自給率を70%以上にあげるまでは、いくら短期間で堆肥化できても、国内で使用してしまえば、有機窒素過多問題に拍車をかけるだけだからだ。