進化の過程では男が先か女が先か?

 引き続き、「生命進化8つの謎」からの引用。

 動物や植物では、運動性の配偶子と、大きな生体へと発生をとげていくのに必要な養分を蓄えている配偶子の間の分業がある。このような分業が引き合う条件があることは、数学モデルで示すことができる。生体に育ったときの大きさを変数として作ったモデルによれば、異形配偶子が決定的に有利となるのだ。ここでも同形配偶子と異形配偶子の種を比べることで、理論への支持が得られる。ヴォルヴォクス(オオヒゲマワリ)というのはクラミドモナスと近縁の緑藻の一族で、多細胞からなる群体(コロニー)を作る。コロニーは緑色で鞭毛を生やした細胞からなる中空の球である。小さなコロニーの種では、配偶子は全部が運動性をもち、大きさはすべて等しい。中間サイズのコロニーを作る種では、やはり運動性をもつが大きさに違いがある。最大のコロニーを作る種では、大型で運動しない配偶子と小型で運動性の配偶子がある。ヴォルヴォクスの場合に、動物と植物の祖先が昔たどった進化の道筋を、われわれは小さな尺度で眺めていることになる。男が最初の性であり、女が後から作られてきたという聖書での話が、たまたま当たっているのはおもしろい。

 ここで、運動性の配偶子とは精子のことであり、必要な養分を蓄えた配偶子は、卵子を意味している。同形配偶子とは、無性集団の配偶子である。また、異形配偶の種とは、有性生殖をおこなう種を意味している。
 無性の種の配偶子は精子の形(鞭毛を持ち小さい)をしているらしい。大きな生体になるのに必要な栄養を蓄えた配偶子を作り有性生殖するには、コストがかかる(ここでいっているコストとはエネルギーの消費の意味だと思う)と著者は言っている。このコストをかけてでも有性生殖に進化した理由に関して、今ある各種理論を著者はあげており、それぞれを複合した理由から有性生殖へと進化してきたと考えているようである。

  1. 選択は有性集団を有利にする
    • 有性集団の方が進化が速い
    • 無性集団には有害突然変異が蓄積する
  2. 選択は有性生殖する個体を有利にする
    • 個体には変異に富む子孫が得られる
    • 性は損傷したDNAを修復する
    • 集団内においても、選択は上記1.の理由から有性の個体を有利にする。すなわち変化する環境のもとでは、こうした個体の子孫は新しい環境によりよく適応できるか、あるいは変化しない環境のもとでは、そうした個体の子孫の方がもっている有害突然変異が少数になる
  3. 選択は有性的な融合を個体に行わせる(あるいは融合する配偶子を生産させる)遺伝子を有利にする。理由は、この場合には融合細胞の一方にある遺伝子が地方に転移できるから